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GE「エコマジネーション」から20年。今日のリーダーはその経験から何を学べるか?

  • takehikomizukami
  • 2025年5月31日
  • 読了時間: 6分

GEの「エコマジネーション」は、2005年当時に環境ビジネスを先進的に立ち上げたものとして画期的だった。それから20年を経て、エコマジネーションを振り返る記事があったのでその内容も含めて紹介する。


拙著「サステナビリティ-SDGs以後の最重要生存戦略」でエコマジネーションについて、製品・サービスのCSVを生み出すカギの1つである「社会課題のトレンドを洞察し、事業機会を見出す」の優れた事例として、以下のように紹介している。


「製品・サービスのCSVは、社会課題と解決策の新しい組み合わせだが、まずは、社会課題の全体トレンド、個別課題の動向を良く理解し、その中に事業機会を見出す必要がある。社会課題を良く理解するには、社会課題の専門家との対話が有効だ。


GEは、Generally not electricと言われたほど金融に傾注した影響もあり、近年は凋落が激しいが、2005年という、まだ環境ビジネスは儲からないと考えられていた時期に、「エコマジネーション」という環境ビジネスのビジョンを打ち出したことは、評価されるべきだ。他社に先行して、環境ビジネスの市場を切り拓いた。当時、GEが他社に先行して環境ビジネスのビジョンを打ち出せた背景には、社会課題の専門家とのエンゲージメントがある。

当時のCEOジェフ・イメルト氏は、毎年の各事業のレビューを実施している中で、すべての事業分野で顧客から「効率を高め、排出を減らすように」という命題を突き付けられていることに気づいた。そして、「環境」が、すべての事業の共通課題になっているのではないかという仮説を持った。


ジェフ・イメルト氏は、この仮説を検証するため、エネルギー、水、都市化などのマクロトレンドを共有し、GEのリーダー層が、顧客に長期視点で将来に向けて何を求めているかを問うとともに、環境課題の専門家であるNGO、政府などとも広く対話した。こうした幅広いステークホルダー・専門家との2日間の“夢の討論”を何度も開催し、「環境」への対応が新たなメガトレンドであるということを確信し、他社に先んじて「エコマジネーション」を打ち出し、環境ビジネスに本格参入した。


製品・サービスのCSV創出のためには、社会課題のトレンドを把握し、イノベーションの対象とすべき課題を特定し、当該課題の現状と方向性を良く理解し、事業機会を見出す必要がある。そのためには、社会課題に精通した外部専門家にビジネスの観点からの仮説をぶつけ、検証を繰り返すといったことを検討すべきだ。」


このGEエコマジネーションを振り返った記事では、先進的な環境ビジネスのマーケティングに対する評価とともに問題点も指摘している。


エコマジネーションは、有害物質排出などの問題を起こしており、サステナビリティでは後れを取っている企業と見られていたGEが、サステナビリティを企業戦略の中心に据えたもので、スーパーボウルでの電気牛が登場するコマーシャルなど巧妙なマーケティングもあり注目を集めた。エコマジネーションは、また、風力タービン、ソーラー・インバーターなどクリーンテクノロジーからの売上と研究開発を倍増し、収益と排出削減の両面で大きな成功を収めた。


エコマジネーションの成功要因としては、CEOが主導する全社的なリーダーシップにより進められたこと。リソースを集中して初期の段階から環境に配慮した製品により大きな収益を得たこと、ステークホルダーとのエンゲージメントをしっかり行ったことなどが挙げられる。


一方で問題点としては、環境ビジネスを促進するキャップ・アンド・トレードなどの施策が進まず政策的なサポートを得られなかったことが挙げられる。化石資源に関わるビジネスを継続していたこともあり「グリーンウォッシュ」の批判を受けるなどメッセージングの混乱もあった。


このエコマジネーションを振り返り、ビジネスによるサステナビリティへの変革の先導について、今日の企業は何を学べるか?5つ挙げる。


①    サステナビリティへの意思を明確にする。エコマジネーションは、ビジネス第一、サステナビリティ第二を打ち出しており、明確に成長戦略であり、環境ミッションではなかった。ビジネス優先を打ち出した場合、サステナビリティへの変革を先導する意思が共有されない。


②    本質的イノベーションを目指す。エコマジネーションの初期の成功の多くは、事業を根本的に変革したり、汚染分野から撤退したりするのではなく、既存の製品(風力タービンや効率的なタービンなど)をエコマジネーション製品としてリブランディングすることによってもたらされた。しかし、このアプローチは、同社のサステナビリティへのコミットメントの深さについて疑問を投げかけた。本質的イノベーションを目指すべきだろう。


③    企業規模に相応しいスケールとインパクトを目指す。エコマジネーションは数十億ドルの収益と注目すべき環境面での進歩をもたらしたが、その成果はGEの全体的な規模に比べると控えめなものだった。例えば、エコマジネーション・チャレンジは、個人や新興企業からアイデアを募り、GEが投資する可能性のあるエネルギー・ベンチャーを特定するオープン・イノベーション・プロセスで、1億4,000万ドルの投資につながったが、GEの370億ドルのエネルギー事業からすれば、ほんのわずかなものに過ぎなかった。企業規模に相応しいスケールとインパクトを持ったビジョンを掲げたい。


④    ネガティブインパクトに責任を果たす。公約や透明性の高い報告にもかかわらず、GEは環境保護団体から、特にハドソン川浄化のようなレガシー汚染問題の精査に直面し続けた。サステナビリティへの貢献を謳う以上、ネガティブインパクトの問題にはけりをつけなければならない。


⑤    イノベーションとコラボレーションを可能な限り効果的に推進する。エコマジネーションのオープンイノベーションの取り組みは、コラボレーションを促進し、何千ものアイデアを生み出した。しかし、これらのイノベーションがGEの中核事業に重大な影響を与えるまでに求められる規模とそれに必要なスケジュールは、サステナビリティに向けたイノベーションを大企業に統合することの難しさを浮き彫りにした。こうした難しさを理解し、効果的にイノベーションとコラボレーションを進めなければならない。


結局のところ、エコマジネーションに関する教訓は、よく宣伝され、十分な資金を提供し、取締役会の支持を得た企業のサステナビリティのイニシアティブであっても、体系的な環境への影響よりも事業の成長を優先し、リブランディングに大きく依存し、過去のネガティブな問題に完全に対処できないということでは、変革には至らないということである。


それでもエコマジネーションは、ビジネスにおいて利益と目的を一致させることの可能性を示すと同時に、野心、透明性、真の変革のバランスをとる必要性を今日のリーダーに思い起こさせた。


(参考)

「サステナビリティ-SDGs以後の最重要生存戦略」水上武彦著(2023年、東京書籍)

”GE’s Ecomagination at 20: Lessons for today’s sustainability leaders”, Joel Makower, May 14 (2025), TRELLIS

 
 
 

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