top of page

1.5℃目標実現には、「予防原則」と「20マイル行進が必要」だ!

  • takehikomizukami
  • 2022年7月17日
  • 読了時間: 3分

IPCCは、「人間の影響が温暖化させてきたことは疑う余地がない」と断言しています。しかし、「温暖化は人為的な温室効果ガスの増加に因らず、自然要因の影響がはるかに大きい」など、温暖化懐疑論も根強くあります。確かに、人間活動によるCO2排出およびCO2濃度の増加、CO2による温室効果、近年の気温上昇は事実ですが、人間活動によるCO2排出増加の気温上昇への寄与度、また、気温上昇の気候などへの影響には、不確実性があります。


では、不確実性があるから対応しなくて良いかというとそうではありません。温暖化/気候変動が人類社会に深刻な影響を及ぼす可能性があるのであれば、「予防原則」に基づき対応すべきです。


予防原則とは、環境保全や化学物質の安全性などに関して、環境や人への影響の因果関係が科学的に証明されていない場合でも、深刻な、あるいは不可逆的な被害の恐れがある場合は、予防のために政策的決定を行うという考え方です。温暖化/気候変動について想定されている影響の深刻さを考えれば、予防原則を採用すべきです。欧州が環境政策で先行しているのは、予防原則が広く採用されているためです。


一方で、予防原則に基づいて政策を進めるとしても、その実施にあたっては、現実に向き合う必要があります。ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格の高騰を受け、欧州で石炭火力の比率が増加するなど、化石燃料回帰の動きがあります。米国でも、最高裁が環境保護庁には発電所の炭素排出量を規制する権限がないと判断するなど、温暖化/気候変動対策に逆風となる動きもあります。フランスでは、2018年に、気候変動対策を進めるマクロン政権による燃料税引き上げに反対する広範囲な抗議デモ「黄色いベスト」が起こりました。


各国が2050年までのGHG排出ネットゼロ、2030年までの50%前後の削減を目標に掲げていますが、国民の意識が十分醸成されていない、反対勢力の影響力もある、エネルギーの安定供給、価格高騰などの現実に対応する必要があるなどを考えると、その実現は容易ではありません。


パリ協定の産業革命以前からの気温上昇1.5度C以内に抑えるという目標を実現するには、

毎年GHG排出を7.6%ずつ削減する必要があるとされます。実際は、新型コロナの影響を受けて経済活動が大きく停滞した2020年でもCO2排出は前年比5.8%減、2021年に至っては、前年比6%増で、過去最高水準となっています。


様々な意見や足元の現実に対応していては、毎年7.6%レベルのGHG削減は、到底実現できないでしょう。強いリーダーシップやコミットメントが必要です。そして、脱炭素の「20マイル行進」を継続する必要があるのではないでしょうか。


20マイル行進とは、経営書のベストセラーで、多くのビジネスパーソンの愛読書となっているビジョナリーカンパニーシリーズの第4弾で示されている概念です。


ビジョナリーカンパニー④では、経営基盤が脆弱な状況から偉大になった企業の成功要因の示しており、その1つとして規律を持つこと、順風でも逆風でも着実に一定の速度で成長する「20マイル行進」を行っていることを挙げています。南極点に人類で初めて到達したアムンゼンが「毎日20マイル進むことを決め」雨の日も風の日もとにかく1日20マイルは進むぞと着実に進み結果を得たとことに由来しています。なお、20マイル行進では、厳しい状況下でも断固として20マイル進む一方、快適な状況下でも行き過ぎて体力を消耗しないよう自制することが重要とされています。


GHG削減については、7.6%以上削減できる年は、それ以上削減することは問題ありませんが、政治的に厳しい状況でも、突発的な事象が発生した場合でも、断固として必要な削減を行うという規律が必要ではないでしょうか。現実に即して柔軟に対応することが必要と考える政治家がほとんどでしょうが、それでは、1.5℃目標は達成できません。


「予防原則」と「20マイル行進」、これがパリ協定の1.5℃目標を実現するために必要な考え方です。


 
 
 

最新記事

すべて表示
コーポレートガバナンス・コードの改訂を機に、サステナビリティ方針を見直すべきではないか。

先般金融庁が提示したコーポレートガバナンス・コード(CGC)改訂案では、サステナビリティに関する記述を「第2章 株主以外のステークホルダーとの適切な協働」から「第4章 取締役会等の責務」に移管し、原則で「取締役会は、中長期的な企業価値の向上の観点から、サステナビリティを巡る課題に積極的・能動的に取り組むべき」と規定している。これまでの「上場会社は、社会・環境問題をはじめとするサステナビリティを巡る

 
 
 
IPBES報告書がビジネス環境のCSVを提唱

「生物多様性と自然」に関わる科学的評価を実施するIPBES(気候変動におけるIPCCに該当)が、初めてビジネスに焦点を当ててまとめた「ビジネスと生物多様性評価報告書」の政策決定者向け要約が発表された。 2026年10月にはCOP17が開催され、昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)の中間レビューが行われる。2030年目標に向けた折り返し地点となるこのタイミングで発表された報告書は、企業や政府

 
 
 
「京浜工業地帯の父」浅野総一郎は、サーキュラーエコノミーの先駆者でもあった

私の故郷である富山県氷見市出身の偉人として真っ先に名前があがるのは浅野総一郎です。明治維新から日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦という激動の時代に、この先日本にとって必要となる事業は何か考え、石炭、セメント、海運、造船などの事業を次々と立ち上げ、京浜工業地帯の礎を築き、「京浜工業地帯の父」と呼ばれています。 浅野総一郎は、「九転十起の人」とも呼ばれ、失敗してもくじけない、不屈の精神でも知られていま

 
 
 

コメント


Copyright(c) 2019 Takehiko Mizukami All Rights Reserved.

bottom of page