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逆境に耐え抜くために必要な心構え「ストックデールの逆説」

takehikomizukami

新型コロナウイルスによる自制的活動がいつまで続くのか、どのような形で続ける必要があるのか、ワクチンや治療薬が普及するのはいつになるのか、経済は果たして元通りになるのか、多くの人が不安に思っているでしょう。こうした先の見えない状況において、どのような心構えが必要なのか、ビジョナリーカンパニー②で紹介されている「ストックデールの逆説」が参考になります。

ビジョナリーカンパニー②では、逆境を克服する企業の経営陣が持つ二面性のことを「ストックデールの逆説」と呼んでいます。逆境を克服する偉大な企業は、一方では、決して目をそらすことなく、厳しい現実を現実として受け入れている。他方では、最後にはかならず勝利するとの確信を持ちつづけ、厳しい現実はあっても、偉大な会社になって圧倒的な力をもつようになる目標を追求している。こうした二面性を持った強い姿勢で困難に対応しています。

「ストックデールの逆説」は、ジム・ストックデール将軍に由来しています。ストックデール将軍は、ベトナム戦争で捕虜となり、8年間の捕虜生活で、20回以上にわたって拷問を受け、いつ釈放されるか見込みがたたない状況を生き抜きました。さらには、捕虜の責任者の地位を引き受け、できるかぎり多数の捕虜が生き残れる状況を作りつつ、捕虜が敵に利用されないように全力を尽くしました。

ビジョナリーカンパニー②の著者ジム・コリンズがストックデール将軍と合って、どのようにして苦境に対処したのか聞いたとき、将軍はこう答えました。「わたしは結末について確信を失うことはなかった。ここから出られるだけでなく、最後にはかならず勝利を収めて、この経験を人生の決定的な出来事にし、あれほど貴重な体験はなかったと言えるようにする。」

次にジム・コリンズが「耐えられなかったのは、どういう人ですか」と聞いたとき、将軍はこう答えました。「それは簡単に答えられる。楽観主義者だ。」ジム・コリンズが先ほどの答えとの矛盾に混乱していると、将軍はこう答えました。「楽観主義者だ。そう、クリスマスまでには出られると考える人たちだ。クリスマスが近づき、終わる。そうすると、復活祭までには出られると考える。そして復活祭が近づき、終わる。つぎは感謝祭、そしてつぎはまたクリスマス。失望が重なって死んでいく。」

将軍はさらに言いました。「これはきわめて重要な教訓だ。最後にはかならず勝つという確信、これを失ってはいけない。だがこの確信と、それがどんなものであれ、自分がおかれている現実のなかでもっとも厳しい事実を直視する規律とを混同してはいけない。」

「どれほどの困難にぶつかっても、最後にはかならず勝つという確信を失ってはならない。そして同時に、それがどんなものであれ、自分がおかれている現実のなかでもっとも厳しい現実を直視しなければならない。」ジム・コリンズは、危機に直面し、それを克服した企業が、この「ストックデールの逆説」の特徴を持っていることに気づき、良い企業から偉大な企業に飛躍するためのコンセプトの1つとして取り上げています。


この「ストックデールの逆説」は、先が見えない新型コロナウイルスの影響にどう対処するか、企業にとっても、個人にとっても、有用な考え方だと思います。

 
 
 

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