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ビジネス・ラウンドテーブルのステークホルダー資本主義宣言から1年

昨年8月19日、ビジネス・ラウンドテーブル(BR)は、米国の主要企業が名を連ねる財界ロビー団体であるビジネス・ラウンドテーブルが、株主資本主義からステークホルダー資本主義への転換を宣言する声明を発表しました。株主至上主義の考えが根強い米国の主要企業の経営者たちが、株主至上主義を脱却し、ステークホルダー重視、「顧客への価値提供」「従業員への投資」「サプライヤーへの公正で倫理的な対応」「事業を展開する地域コミュニティの支援」「株主への長期価値創造」にコミットしたことは、大きな反響を呼びました。


サステナビリティの仕事をしていると当たり前のことで、多くの日本企業にとっても違和感のないステークホルダー資本主義ですが、これが話題になるということは、それだけ米国では、株主至上主義が根強いということでしょう。マルチステークホルダーへのコミットメントの一方で、BRの声明では、「自由市場システムが、すべての人々に、質の高い雇用、力強く持続可能な経済、イノベーション、健康な環境および経済的機会を提供する最高の手法」であるとして、自由市場経済の重要性も確認しています。ここの信念は揺るぎません。


ミルトン・フリードマンが、「企業の社会的責任は利益を最大化すること、株主価値を最大化すること」だと宣言し、それが広く受け入れられて以降、株主価値重視の経営が世界を席巻しました。その結果、確かに世界的な経済成長は実現されましたが、地球環境問題、格差をはじめとする弊害も目立っており、株主資本主義の欠陥が明らかとなっている中で、昨年のBRの声明が発表されました。


その後1年経って、BRの声明の影響があったかというと、そういうわけでもなさそうです。BRの声明を受けて何か新しい取組みを始めたという企業の情報はほとんどありません。基本的に全ての企業が、従来からのサステナビリティの取り組みを継続しているのみです。


一方で、コロナ禍を受けて、ステークホルダー資本主義を本当に実践している企業とそうでない企業は、明らかになったように思います。一部の企業は、短期的な株主価値を犠牲にしても、従業員、サプライヤー、地域コミュニティを支援しています。


そう考えると、BRの声明に署名した181人のCEOの率いる企業が、コロナ禍でどのような対応をとったかは、検証してみる価値があるかも知れません。いや、本来、BRがそれを検証すべきだと思います。


BRの声明をはじめとして、美しいコミットメントを掲げる企業は増えていますが、具体的な活動に落とし込んでいる企業は、まだ限られます。そうした状況に危機感を持ち、定義、評価の枠組み、ガバナンスの仕組みなどを確立しようという動きもあります。サイード・ビジネス・スクールが中心となった研究グループによる、企業のパーパスをただの発言から具体的な活動に変える方法をまとめたレポート「エンアクティング・パーパス・イニチアチブ」などは、注目されているようです。


本格的なステークホルダー資本主義が本格的に根付くまでには、時間がかかるかも知れませんが、様々なイベントやイニシアチブを有効に活用し、もっと議論と実践を加速していくべきです。

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