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サステナビリティが目指すドーナツ経済的世界観         WBCSDビジョン2050

今般出版した書籍でも述べていますが、「サステナビリティ」が目指す世界は、「すべての人々が平和と一定の豊かさのもと潜在能力を発揮でき、地球への負荷が再生可能な範囲に収まっている世界」といった感じのものです。これは、一定の豊かさを満たしつつ(基本的なニーズが満たされない内側の円を超え)、環境の上限(外側の円)を超えない範囲内で生活していこうという、ドーナツ経済のようなイメージの世界です。


このサステナビリティが目指す、ドーナツ経済的な世界観を具体的に示しているものとして、WBCSDの「ビジョン2050」があります。


ビジョン2050は、サステナビリティの加速を目指す世界の主要企業200社のCEOが主導する組織であるWBCSDが、人類が直面する課題の緊急性を踏まえ、サステナブルな世界

とはどのようなものか、どのようにしてそのような世界を創り出すことができるのか、そしてそれを実現するための企業の役割とは何かについて検討・整理したものです。2010年に最初のビジョンが発表され、2021年に更新されています。


WBCSDがビジョン2050で掲げる目指す世界とは、「2050年までに90億人以上がプラネタリーバウンダリーの範囲内で真に豊かに生きられる」というものです。


ここで、「真に豊かに生きられる」とは、すべての人の尊厳と権利が尊重され、基本的なニーズが満たされ、すべての人に平等な機会が存在することを意味します。「プラネタリーバウンダリーの範囲内」で生きるとは、地球の気温上昇が+1.5℃未満で安定し、自然が保護・復元され、サステナブルな方法で利用されることを意味します。また、健全で再生力をもつ

地球システムにおいて、社会がレジリエンスを構築し、かつ維持するための十分な適応能力を身に付けていることも意味します。これは、基本的にドーナツ経済と同じ世界観です。


WBCSDのビジョン2050報告書では、この2050年に向けて目指す世界は、企業活動、経済、社会を早急かつ大幅に変革して初めて達成できるとしています。そして、企業活動が中心的な役割を果たすべき領域として、エネルギー、交通・輸送とモビリティ、生活空間、製品と物質・材料、金融商品・サービス、コネクティビティ、健康とウェルビーイング(安心で健やかな暮らし)、水と衛生、食料の9つをあげ、変革の道筋を示しています。


サステナビリティが目指すべきドーナツ経済のような世界観と、その実現に向けた道筋を示した、WBCSDのビジョン2050は、広く共有されるべきものです。


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