top of page
検索
  • takehikomizukami

気候変動対策の明るいビジョンを描くべき

米誌TIMEが選んだ今年の人は、グレタ・トゥンベリ氏です。気候変動ストライキ、気候行動サミットでの怒りのスピーチなどを通じ、気候変動への関心を高め、国の政策、企業の取組み、市民の行動に影響を与えています。


グレタ氏は、危機感が足りないと訴えます。「私たちの家は焼け落ちようとしています。」「もし家が焼け落ちつつあったら、全面的に行動を変えるはずです。緊急事態のように。」グレタ氏は、そうした危機を鮮明に感じているのでしょう。天才と言えます。


一方で、多くの常人は、それほど危機感を感じていません。グレタ氏が発言や行動で送る「飛行機に乗るな」「肉を食べるな」などのメッセージには、反感を覚える人も多くいます。現在慣れ親しんでいる生活や行動を変えるのは、難しいものです。特に我慢はしたくない。


気候変動対策は、我慢、窮屈、コスト、停滞、そういったイメージを持たれてしまっているようです。気候対策と社会・経済の発展が二項対立でない、明るいビジョンを描かなければなりません。


EUが、2050年に域内で排出される温室効果ガスを実質ゼロにすることで合意しましたが、その記者会見において、フォンデアライエン欧州委員長は、「欧州が成長する将来への機会だ」、「(目標達成が)人類が月に立ったときと同じだ」と述べています。EUの気候変動対策は、“ムーンショット”だということです。


ムーンショットは、ジョン・F・ケネディ大統領が、1962年に「1960年代が終わる前に、月面に人類を着陸させ、無事に地球に帰還させる」という目標を掲げ、実現したことに由来する「困難だが、実現によって大きなインパクトがもたらされる、壮大な目標・挑戦」のことです。確かに、EU気候変動対策は、大きなインパクトをもたらす、壮大な目標・挑戦です。


しかし、イノベーションを研究するスコットD. アンソニー氏は、優れたムーンショットには3つの要素があるとしています。1つ目は、人を魅了し、奮い立たせるものであること(inspire)、2つ目は、信憑性(credible)、3つ目は、創意あふれる斬新なものであること(imaginative)です。気候変動対策も、この条件を満たす必要があるでしょう。


人々が我慢しなければならないビジョンでは、人を魅了し、奮い立たせることはできません。明るい未来、魅力ある未来を提示しなければなりません。


日本政府も、残念ながらCOP25では化石賞を2つもとってしまいましたが、気候変動について危機感を持ち、それを克服することで明るい魅力ある未来が拓けるビジョンを提示すべきです。そこには、大きな機会があると思います。

閲覧数:18回0件のコメント

最新記事

すべて表示

トライセクター型人財がより求められる時代になっている

拙著「サステナビリティ -SDGs以後の最重要生存戦略」で、民間、公共、市民社会の3つのセクターの垣根を越えて活躍、協働するリーダーである「トライセクター・リーダー」を紹介しています。 具体的な人物としては、アップルでサプライヤーを巻き込んだ再生可能エネルギー100%推進などを推進するなどサステナビリティの取り組みを先導するリサ・ジャクソン氏などを紹介しています。ジャクソン氏は、2009 年から2

SXとは何か?どう実践するか?

日本人は「X」が好きなようだ。古くはCX、UXが広く使われ、最近はDXから派生して、サステナビリティの領域で日本オリジナルのSX、GXが広く使われている。CX、UXはExperienceだったが、DX以降はTransformationだ。変革が苦手な日本政府、日本企業が言葉だけでも景気のいいものをということで広めているのだろうか。言葉だけ景気がいいのは、最近の政治家にも言えることだが。 それとも日

せめてセルフレジでは、紙レシートを発行しなくても良いようにして欲しい

皆さん、紙レシートはどう扱っていますでしょうか? 私はそのままゴミ箱に捨てています。手間をかけて環境に負荷を与えるLOSE-LOSE、共有損失の創造、シェアードロスになっています。 一枚一枚のレシートは小さなものですが、大量に生産・廃棄されているため環境負荷も馬鹿になりません。日本全国で年間に消費されるレシート用紙は約5.4万トンとされ、A4サイズのコピー用紙約135億枚に相当するとのことです。

bottom of page