top of page

サステナビリティは美味しい!フェッツアーのワイン

  • takehikomizukami
  • 2021年5月8日
  • 読了時間: 3分

エシカル消費をエシカルだという理由だけで行う消費者はほんの一握りだ。それはこれからも変わらないだろう。消費者の基本ニーズに応えられない商品は売れない。食品・飲料であれば、美味しくなければ、如何にサステナブルでも売れることはない。


しかし、食品・飲料については、サステナビリティと美味しさは、多くの場合、両立する。ワインを例に挙げよう。


フェッツアーは、カリフォルニアでサステナブルなワイン作りを追求している。フェッツアーがサステナブルなワイン作りを始めたきっかけは、ブドウの味だった。あるとき、フェッツァーのCEOとしてサステナブルなワイン作りを推進することとなるポール・ドーラン氏は、収穫間近のブドウの味見をしていて愕然としました。ある列のブドウが芳醇な味を持っていたのに対し、そこから15フィートも離れていない別の列のブドウは実に味気なかったからだ。前者は有機栽培したブドウ、後者が従来の農法で栽培したブドウだった。


ドーラン氏は、「このままではいけない。こんなやり方を続ければ、ブドウの味が落ちてワインの評価が下がるだけでなく、環境を汚染することになって子孫の世代に禍根を残す」と悟りました。そして、サステナブルなワイン作りに突き進んだ。


ドーラン氏は、CEOに就任してすぐマネジメントチームと数日間の議論を重ね、ミッションを作り上げた。その一つとして、「わたしたちは、環境・社会に対する高い意識をもってブドウを栽培し、最高の品質・価格を持つワインを製造し、販売する」を掲げた。そして、従業員との対話やワイナリーツアーなどを重ねミッションに対する思いを共有した。


その後、「フェッツァー社が所有・管理・契約するブドウ園のすべてで有機農法を実施する」というビジョンを掲げ、その実現を推進した。その他、廃棄物ゼロに向けた取り組み、再生可能エネルギーやエコカーの利用などの取り組みも進めた。


ドーラン氏は、こうしたサステナブルな経営を推進する原則的な考えとして、「会社は、それよりはるかに大きなシステムの一部である」「企業の高潔さは、従業員の心にある」「未来は予測できないが、未来を作ることはできる」「理念が実現するタイミングは、(断固たる態度を取ることにより)みずから引き寄せることができる」などを挙げている。


こうしてサステナブルなワインとして有名になったフェッツアーだが、それを進めた最大の理由は、美味しいワインを作ることだ。有機栽培のほうが芳醇で美味しいという事実から、サステナブルなワイン作りを推進した。


このように、食品・飲料では、サステナビリティと美味しさは両立する。そして、食事は、団らんも大事だ。そこでもサステナビリティというストーリーは、価値を生み出すだろう。


 
 
 

最新記事

すべて表示
ドラッカーの「5つの質問」で考える、サステナビリティ経営におけるステークホルダー・エンゲージメントのあり方

ドラッカーが開発した組織の自己評価ツールとして「5つの質問」がある。社会が組織で構成され、人々が必要とするもののほとんどが組織により提供される組織社会において、組織が正しい成果を上げるための思考を促す、シンプルですが非常に有効なツールだ。 ドラッカー曰く、「組織はすべて、人と社会をより良いものにするために存在する。すなわちミッションがある。目的があり、存在理由がある。」 正にそのとおりだ。組織と社

 
 
 
サステナビリティに関してもはや成り立たない5つの前提:グローバル目標や合意、ESG情報開示、ステークホルダー資本主義などはサステナビリティに向けた変革につながらない。

主なポイント: 多くの企業が依存してきたサステナビリティの前提条件は、気候変動対策を前進させるどころか、むしろ阻害している可能性がある。 それは、グローバル目標への依存や、市民がサステナビリティについて共通認識を持っているという前提が成り立たないからだ。 代わりに、サステナビリティの専門家は新たなアプローチに注力する必要がある。例えば、自らがコントロールできる領域に注力し、影響力を行使できない領域

 
 
 
「サステナビリティを適切に実践することで、収益性が21%向上する。」サステナビリティのビジネスケースに関する最新のレポート

サステナビリティのビジネスケースに関する議論は終わった。過去10年間の研究は、サステナビリティが優れた財務パフォーマンスにつながることを示している。 主なポイント: ・新たなデータによると、サステナビリティを適切に実践することで、収益性を21%向上させるなど、優れた財務実績につながることが示されている。 ・企業は顧客向けに価値提案を定義することが多いが、取締役会、経営幹部、事業部門リーダー向けには

 
 
 

コメント


Copyright(c) 2019 Takehiko Mizukami All Rights Reserved.

bottom of page