top of page
検索
  • takehikomizukami

「真摯なパーパスの追求がイノベーションを実現する」エネルの事例

今年のShared Value Leadership Summitのビデオを視ていますが、例年通り、エネルのセッションは、面白いですね。エネルは、世界最大クラスの電力会社でありながら、将来的に電力を100%再生可能エネルギーで供給することにコミットし、その実現に向けて、サステナビリティとイノベーションの同時推進(Innovability)を推進しています。今年のSummtでは、Innovabilityの責任者であるChief Innovability OfficerのErnesto Ciorra氏が登壇しています。


Ernesto氏は、エネルがInnovabilityを推進する理由として、「企業はイノベーションがなければ生きていけない。しかし、サステナビリティがなければ生きていく資格がない」というフィリップ・マーロウのようなことを言っています。実際には、「企業が存続していくためには、イノベーションが不可欠であり、社会・環境のサステナビリティに貢献するだけでは生きていけない。しかし、社会・環境のサステナビリティに貢献することは、企業が存在する前提条件であり、それに貢献しないイノベーションには意味がない」と言っています。


そして、「イノベーション実現のためには、優秀な人材が必要だが、最も才能ある人材は、お金では動かない。実際、過去に社会を変えてきた人々は、お金のために動いてきたわけではない。優秀な人材を惹きつけるには『パーパス』が必要である」としています。さらには、才能ある人材が自社に所属してくれるとは限らないため、『パーパス』に基づく協働、エコシステムの構築が重要としています。


エネルのパーパスは、SDG7「すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」そのものであり、再生可能エネルギーの普及だけでなく、安価で信頼できるエネルギーアクセスを追求しています。不安定な電力グリッドが原因で、途上国の病院で多くの人が無くなっており、こうした課題を解決しなければならないと考えています。


エネルのInnovabiltyの取り組みで重要なのがOpen Innovabilityで、Webを通じて世界中の様々なステークホルダーの協力を得て、オープンイノベーションで、エネルのパーパス実現に必要な課題の解決を進めています。こうしたパーパスに基づくオープンイノベーションに重要なのは、エネルが信頼できる企業であることです。自社のパーパスを真摯に実践し、社会における信頼を高めることが必要です。以前、Ernesto氏がCEOのFrancesco氏と化石燃料への投資について議論したとき、15分で投資しないという結論となったとのことですが、それもパーパスに真摯であるからこそでしょう。


「パーパス」の企業経営上の重要性は、広く認識されるようになっていますが、パーパスを真摯に実践し、信頼を確保し、優秀な人材を惹きつけて、イノベーションを実現する。そうしたサイクルが回ってこそ、パーパスは意味を持つものです。

閲覧数:85回0件のコメント

最新記事

すべて表示

トライセクター型人財がより求められる時代になっている

拙著「サステナビリティ -SDGs以後の最重要生存戦略」で、民間、公共、市民社会の3つのセクターの垣根を越えて活躍、協働するリーダーである「トライセクター・リーダー」を紹介しています。 具体的な人物としては、アップルでサプライヤーを巻き込んだ再生可能エネルギー100%推進などを推進するなどサステナビリティの取り組みを先導するリサ・ジャクソン氏などを紹介しています。ジャクソン氏は、2009 年から2

SXとは何か?どう実践するか?

日本人は「X」が好きなようだ。古くはCX、UXが広く使われ、最近はDXから派生して、サステナビリティの領域で日本オリジナルのSX、GXが広く使われている。CX、UXはExperienceだったが、DX以降はTransformationだ。変革が苦手な日本政府、日本企業が言葉だけでも景気のいいものをということで広めているのだろうか。言葉だけ景気がいいのは、最近の政治家にも言えることだが。 それとも日

せめてセルフレジでは、紙レシートを発行しなくても良いようにして欲しい

皆さん、紙レシートはどう扱っていますでしょうか? 私はそのままゴミ箱に捨てています。手間をかけて環境に負荷を与えるLOSE-LOSE、共有損失の創造、シェアードロスになっています。 一枚一枚のレシートは小さなものですが、大量に生産・廃棄されているため環境負荷も馬鹿になりません。日本全国で年間に消費されるレシート用紙は約5.4万トンとされ、A4サイズのコピー用紙約135億枚に相当するとのことです。

bottom of page