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「パーパスはシェアード・バリューである。」(M.E.ポーター)

  • takehikomizukami
  • 2019年6月15日
  • 読了時間: 3分

昨年まで毎年、5月に開催されるCSVの世界大会とも言える、シェアード・バリュー・サミットに参加していたのですが、今年は転職したてのこともあり、参加しませんでした。その代わり、Share Value InitiativeのHPにアップされている今年のビデオを視ています。


今年のサミットのテーマは、「Purpose」。毎年のサミットのハイライトとなっているマイケル・ポーター教授のプレゼンでも「Purpose」について語られています。


ポーター教授は、例年どおり「社会は問題を抱えており、その問題を解決できるのはビジネスだけだ。税金に頼る政府、寄付に頼るNPOは課題解決ためのリソースに限界がある。自ら富を生み出しつつ課題を解決できるビジネスだけが、十分なリソースを提供し、持続可能にスケールしながら課題を解決できる」としています。そして、現在の資本主義が抱えている問題を解決するには、企業は自ら高い目標を掲げ続ける必要があり、その軸となるのがパーパスだとしています。


その後、ビジネスと社会の関わりの変遷、ミルトン・フリードマン的な「株主価値の最大化こそが、ビジネスの社会貢献だ」という考えから、フィランソロピー、CSR(ポーター教授は基本的に社会規範に対するコンプライアンスと捉えている)、トリプルボトムライン、サステナビリティ、コンシャスキャピタリズム、Bコープなどの様々な考えや取り組みについて、語っています。サステナビリティについては、エコノミストの視点からは利益と相反すると考えられており、コントロバーシャルだとしています。また、最近は、企業の社会価値を測定するトレンドもあるが、ESGの多くのフレームワークはチェックボックス的であり、マテリアリティはリスクに着目しているとしています。


そして、「パーパス」がトレンドとなっているとして、ブラックロックCEOラリー・フィンク氏のレターの内容を解説し、2019のレターのほうが、利益との結びつきを語っており面白いとしています。ただ、まだパーパス・ステートメントを掲げる企業は少なく(フォーチュン500のうち46社)、パーパス・ステートメントを掲げている企業も、「自社が何者であるか」「どのような社会インパクトを生み出すか」「戦略との結びつき」といったことを十分示していないと、具体的事例をいくつか挙げて、指摘しています。この中で、ポーター教授のお気に入りのディスカバリー・ヘルスことは、褒めています。


最後にポーター教授は、企業と社会の関わりについて、いろいろな動きはあるが、「シェアード・バリューこそが社会インパクトをレバレッジできる」「パーパスには方法論がないのが問題だが、シェアード・バリューには方法論がある」などとした上で、「ビジネスのパーパスは、経済的価値とともに社会シェアード・バリューを生み出すこと」、さらに「パーパスは、シェアード・バリューだ。パーパス・ステートメントの中心に、如何に社会とビジネスの両方に成長と成果生み出すかを示すべきだ」としています。


ポーター教授は、「パーパスは、シェード・バリュー」というレターをラリー・フィンク氏に書くとも言っていましたので、来年のラリー・フィンク氏のレターのタイトルは、「パーパスとシェアード・バリュー」になるかも知れません。

 
 
 

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