「SX」、「サステナビリティ・トランスフォーメーション」という言葉が少しずつ広がっているようだ。SXは、サステナビリティを経営に取り込むことであり、より具体的には、「長期視な視座を持ち」、「従来外部不経済と捉えられて、企業活動の外側にあるものと認識されてきたサステナビリティ課題がもたらす機会・リスクを認識し」、「持続可能なビジネスモデル構築に向けて企業を変革する」ことだ。
SXを実現するためには、自社のビジネスモデルとサステナビリティ課題の関係性、それがもたらす長期的な機会とリスクを認識することが最初のステップとなる。これは、本質的なマテリアリティ分析そのものだ。
これまでのマテリアリティ分析は、GRI、ISO26000、SDGsなどのグローバル基準から主要なサステナビリティ課題を整理し、「ステークホルダーにとっての重要度」と「自社にとっての重要度」を評価することが基本的なやり方となっている。「ステークホルダーにとっての重要度」は、ステークホルダーやサステナビリティの有識者にヒアリングやアンケートを実施して評価することが多い。「自社にとっての重要度」は、マネジメントや担当者による議論で評価することが多い。FTSE、DJSIなどのESGインデックスをものさしとして使うこともある。そして、「ステークホルダーにとっての重要度」と「自社にとっての重要度」をマトリックス化して可視化し、右上を中心としてマテリアリティとして特定する。
このマテリアリティ分析において最も重要なのは、「自社にとっての重要度」の評価だが、ほとんどの場合、ここの評価がサステナビリティの知見が必ずしも十分でないマネジメントや担当者の主観的な議論でなされ、同業他社と大差ない一般的なマテリアリティが特定される要因となっている。
「自社のバリューチェーンと各サステナビリティ課題の相互依存関係はどうなっているか?」「サステナビリティ課題は、自社ならではの強み、自社ならではのビジネスモデルに長期的にどのような影響を及ぼすか?」「それがもたらす重要な機会とリスクは何か?」そうした論点をしっかり整理して、共通認識をもった上で議論出来ているケースは、ほとんどない。
この自社ビジネスとサステナビリティ課題の本質的理解にもとづくマテリアリティ分析こそが、SXの一丁目一番地であり、この重要性は、大いに強調すべきものだ。
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