top of page

SDGs採択から5年、戦略的SDGsの推進を考えるべきとき

  • takehikomizukami
  • 2020年10月24日
  • 読了時間: 3分

2015年9月にSDGsが採択されてから5年が経ちました。SDGsはかなり浸透し、普通にメディア等で報道されるようになり、SDGs本も多数出版されてそこそこ売れているようで、SDGsバッヂを付けるビジネスパーソンも、大手町・丸の内あたりでは、当たり前になりました。


このようにSDGsという言葉は浸透していますが、SDGs実現に向けた取り組みが進んでいるかというと、クエスチョンが付きます。コミュニティ活動などで、SDGsをテーマにしたワークショップを行われるといったことは増えていますが、そこから何かが生まれるわけではありません。企業も統合報告やサステナビリティレポートにおいて、自らの活動にSDGsのロゴを紐づけるケースは増えていますが、そこから新しい価値が生み出されることはありません。SDGsの社内研修なども増えていますが、アクションにつながるわけではありません。


では、SDGsは単なるファッションで意味がないのか、というとそれは違います。SDGsのような共有目標、ビジョンを掲げることは、世界を変えていくために必要です。ただ、共有目標、ビジョンを実現するためのガバナンス、マネジメントが不足しています。国連は、初期には、SDGsのプロモーションに力を入れ、それはSDGsの認知・関心を高めることに、一定の効果がありました。ハイレベル政治フォーラムで毎年フォローアップとレビューを行うのは良いと思いますが、回を重ねるにつれ、形式化している印象があります。


SDGs実現に向けた取り組み強化のためには、いくつかの方法があるかと思いますが、そのためには、SDGsとは何かを整理する必要があります。第1にSDGsは「目標」です。これは、多くの人が理解しているところでしょう。第2にSDGsは「ツール」です。サステナブルな社会実現のために、うまく使われるべきものです。第3にSDGsは「理念」です。「誰一人取り残さない」という言葉が象徴的ですが、こういう社会を創っていこうという考え方を提示しています。この3つめの側面については、SDGsの浸透活動を通じて、ある程度理念が広まっているかと思います。


第1の「目標」としてのSDGsの問題は、対象が広すぎるということです。17ゴール、169ターゲットをいった壮大な目標を提示されても、どう手を付けて良いか分かりません。また、「優先課題を特定して、それに取り組め」と言われても、自発的に取り組むインセンティブがありません。気候変動、人権など、個別イシューごとには、法令やイニチアチブなどによって取組みが進んでいます。SDGsも17ゴール、169ターゲットを前面に出すのではなく、結果としてこれらを達成するために、波及効果の大きい重点イシューを特定し、それらについて、重点的にイニシアチブを推進するといったことが必要です。既存のイニシアチブの効果も見据えつつ、SDGsを構造化し、重点的に取り組むべきイシューで、追加でイニシアチブを立ち上げる必要のあるもの、既存のイニシアチブを梃入れする必要のあるものがあれば、そこに重点的にリソースを投入すべきです。


第2の「ツール」としてのSDGsについては、SDGs採択直後は、「より良きビジネス、より良き世界」、「SDGコンパス」、「SDGインダストリーマトリックス」など、ビジネスにおいて活用できるレポートやツールが発表されていましたが、その後は、有効なツールは出てきていません。SDGsに関する書籍も、ほぼ概念的な内容、既存の事例紹介にとどまっています。SDGsは、まずは課題のチェックリストとして使えますが、新規事業探索、バリューチェーン/エコシステム強化などにSDGsが活用できるよう、SDGsツールの開発にもっと力を入れることが期待されます。


SDGsに関心を持つ人の裾野は広がっています。しかし、本気でSDGsを実現しようとする人々が戦略的に行動しないと、本当にファッションで終わってしまいます。SDGs採択から5年を経た今、改めて戦略的SDGsの推進を考えるべきときです。

 
 
 

最新記事

すべて表示
「CSOが影響力を高めるための4つの方法」:予算や権威の限られるChief Sustainability Officerは、どのように影響力を高められるか?4つの方法を示します。

サステナビリティ部門の予算は、通常、マーケティングや研究開発(R&D)部門の予算のほんの一部に過ぎない。どうすれば目標を達成できるだろうか?TRELLISの記事を紹介します。 主なポイント: ・サステナビリティ担当者のうち、企業戦略に大きな影響力を持っていると回答したのは約4分の1にとどまる。 ・大きな変革は、権限と同じくらい影響力によってもたらされるものであり、当初は権限が限られているCSO(サ

 
 
 
無形資産/非財務資本を評価し融資する制度がスタート。新しい制度が広く活用され、サステナビリティ経営を促進することに期待

先般、「企業価値担保権」制度が始まりました。事業の将来性や技術力といった目に見えない価値を担保に、銀行などの金融機関が企業に融資する制度です。事業の将来性や技術力といった目に見えない価値を担保に、銀行などの金融機関が企業に融資する制度です。 銀行が企業に融資する場合、土地や建物などの有形資産を担保として設定するのが主流ですが、今後は知的財産、ブランド、顧客基盤などの無形資産を含む事業全体を担保にす

 
 
 
レアアースリスクがサーキュラーエコノミーを加速し、イラン戦争がカーボンニュートラルを加速する。地政学とサステナビリティが絡み合う時代には、サステナビリティ経営にもより高度なインテリジェンスが求められる。

サステナビリティ経営においては、“フォーカシング・イベント(Focusing Event)”への感度の高さが重要だ。 フォーカシング・イベントとは、マスコミや市民、政策担当者が急速に社会課題に注目し、対策を進めるきっかけとなる出来事のことで、日米の政権交代なども含む。 サステナビリティを促進することにつながるこれまでのフォーカシング・イベントとしては、以下のようなものがあった。 2018年、鼻にス

 
 
 

コメント


Copyright(c) 2019 Takehiko Mizukami All Rights Reserved.

bottom of page