top of page
検索

SDGsへの取り組みの段階論と政策への期待

  • takehikomizukami
  • 2019年5月5日
  • 読了時間: 2分

更新日:2019年5月6日

日本企業によるSDGsの取り組みの現在位置は、どこにあるでしょうか。自社の活動とSDGsを紐づけて、Webやサステナビリティレポートなどでコミュニケーションする。加えて、社内研修などにSDGsを組み込み、社内浸透を図る。これを企業SDGs1.0としましょう。日本の大企業の多くは、この段階にあるでしょう。


次に、SDGsの優先課題を中心に、社会貢献活動、希望者によるプロジェクト提案など、本業外においてSDGsへの貢献に向けたプログラムを新たに立ち上げる。SDGs貢献製品・活動などを評価する制度を新たに設けるなど、本業はそのままで、SDGsに関する取り組みを新たに始める。これを企業SDGs2.0としましょう。日本でSDGs先進企業とされている企業は、この段階でしょうか。


その次の段階は、SDGs貢献に向けて事業ポートフォリオを組み替えるなど、本業を変える。これを企業SDGs3.0としましょう。ネスレやダノンなどが健康や栄養を軸に事業ポートフォリオを組み替えるなど、SDGsへの貢献を目的としているわけでは必ずしもありませんが、サステナビリティの観点で本業を変える企業はあります(参考事例)。こうした企業は、企業SDGs3.0に進んでいるとしても良いでしょう。また、社会的企業と言われる、社会課題解決をミッションとして創業し、それを忠実に実践し続けている企業も企業SDGs3.0の段階にあるとします。


そして、政府、他企業、市民セクターなどを巻き込んで、SDGs貢献に向けて社会を変えるエコシステムを構築する。これを企業SDGs4.0とします(参考事例)。企業SDGs3.0までが基本的に単独の企業の取り組みであるのに対し、複数の組織が協働でSDGsに貢献しようとするものです。SDG17にも関係しますが、コラボレーションはSDGs実現のカギを握っています。


以上、企業の視点でSDGsへの取り組みの段階を示しましたが、コミュニケーションや啓発を中心とするSDGs1.0、一部で新たな取り組みを始めるSDGs2.0、組織の在り方自体を変えるSDGs3.0、マルチステークホルダーでの取り組みを進める(大きく言えば、社会の在り方自体を変える)SDGs4.0は、すべての組織に当てはまるものです。


SDGs実現に向けては、特に企業と政策との連携によるイノベーションの創出が重要です。以前、企業の食品ロス対策を促進する税控除などの政策について書きましたが、政策の影響は大きいものです。。外務省や環境省が中心となっている日本政府のSDGsの取り組みは、SDGs1.0と2.0の間くらいの印象です。日本が優先的に取り組むべき課題を中心に、企業のイノベーションを促進する政策をもっと打ち出してもらいたいと思います。

 
 
 

最新記事

すべて表示
サステナビリティ目標達成のために避けるべき誤り-企業がサステナビリティ目標を達成する能力を損なう7つの指標

過去20年間で、企業はサステナビリティに対して野心的なコミットメントを行うことについては、大きく前進した。経営幹部の68パーセントがしっかりとしたサステナビリティ計画を策定していると答え、公開している大企業の89パーセントがネット・ゼロのコミットメントを行っている。しかし、...

 
 
 
トランプ関税の影響でサプライチェーンが変化した場合、サプライチェーンのESGデータ収集、スコープ3を含む脱炭素目標の開示や実践、人権デューデリジェンスなどにも影響が出てくる。

キーポイント ・    関税によるサプライチェーンのシフトは、バリューチェーンの影響に関するデータを収集する企業の能力に影響を与え、炭素開示目標のタイムフレームをシフトさせる可能性がある。 ・    サプライチェーンが場所を移動した場合、人権への取り組みや倫理的なビジネス慣...

 
 
 
能登の復興において「集約化」の議論があるが、生物多様性とのアナロジーから考えても、地域の多様性を安直な経済合理性だけで喪失させてはならない。

能登半島地震からの復興に関して、もとに戻すのではなく地域を集約化して新しいまちづくりをしていくべきとの意見がかなりあるようだ。人口減少、高齢化が進む過疎地をもとに戻すのは行政コストの面などから適当ではないとの考えだ。しかし私は、生物多様性のアナロジーで考える地域多様性の価値...

 
 
 

Kommentare


Copyright(c) 2019 Takehiko Mizukami All Rights Reserved.

bottom of page