SDGsは、「貧困をなくそう」「飢餓をゼロに」といったシンプルなキーワードとカラフルなロゴで示されることが多いですが、これが親しみやすさにつながり、SDGsに広がりに貢献していると思います。一方で、シンプルなキーワードだけでは、SDGsの内容が十分に伝わらない面もあります。
例えば、SDGs目標2は、「飢餓をゼロに」と表現されますが、正式には、「飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する」です。また、ターゲットには、2030年までの飢餓の撲滅、栄養不良解消、小規模農家の生産性・所得倍増、持続可能な食料生産システム構築などが含まれます。
「飢餓をゼロに」とだけ理解していると、途上国への食料支援、フードバンクといった限られた活動のイメージしかわかず、企業が取り組む場合には、社会貢献活動として行うことになります。しかし、ターゲットレベルまでしっかり理解すれば、企業として取り組めることがたくさんあることが分かります。
例えば、食品企業であれば、「小規模農家の生産性・所得倍増」に関して、サプライチェーンにおいて小規模農家に依存している農作物を中心に、小規模農家に品質向上のノウハウや必要な資金を提供するなどの支援を行い、それにより高品質な原材料の安定調達を実現するといったCSVの取り組みが考えられます。
「持続可能な食料生産システム構築」については、より幅広い企業が取り組むことができます。広大な土地や莫大な水を利用し、メタンなどの温室効果ガスを排出する食料生産を持続可能なものとするため、様々な取り組みが考えられます。
ICTなどのテクノロジーを用いて、効率的な農業を実現しようとするアグテックでは、センサー、ドローンなどを用いた水利用や農薬散布の効率化、衛星画像やIoTデバイスからのデータを用いた生産性向上、収穫ロボットなど、様々なテクノロジーが農業に応用されています。垂直農場/植物工場など、土地を使わない農業の開発も進められています。
世界の温室効果ガス排出の約14%を占めるなど特に環境負荷の大きい食肉生産に関しては、植物肉が普及し、培養肉の開発も進んでいます。植物肉については、スタートアップも含めて基本的に食品メーカーが提供していますが、植物肉の形状を安定化させる接着機能を持つ素材や塩分を抑えながら肉の風味や食感をつくり出す素材を化学メーカーが提供するなど、食品メーカー以外にも事業機会があります。畜産の環境負荷軽減に関しては、温室効果ガスであるメタンの大きな排出源となっている牛の消化管内発酵を抑える飼料添加物を素材メーカーが提供している例などもあります。
SDGsをシンプルなキーワードで理解するだけでなく、内容をしっかり理解することで、ビジネス機会も多く存在することが分かり、取り組みの幅が広がります。既存活動へのラベル貼りや限られた社会貢献的取り組みが目立つ企業のSDGsの取り組みを、より本格的なものとしていくには、まずはSDGsをしっかり理解することが重要です。
Yorumlar