top of page
検索
  • takehikomizukami

GHG排出削減。CO2の次のターゲットメタンに注目。

COP26で、グラスゴー気候合意が採択されました。1.5℃が共通目標となったこと、表現が弱められたとは言え石炭火力の段階的削減が明記されたこと、懸案であったパリ協定第6条の温室効果ガス排出削減量取り引きルールが合意されたことなどから、COP26は概ね成功だったと考えられています。


また、グラスゴー気候合意には、新しい内容が2つ盛り込まれました。1つは、温暖化ガスを吸収する森林などの自然と生態系の保護・回復の重要性が強調されたこと、もう1つは、メタンなどのCO2以外の温室効果ガスの2030年までの排出削減が盛り込まれたことです。


COP26では、これらの内容を促進するイニシアチブも立ち上がっています。


森林については、2030年までに森林破壊・劣化を食い止めることを目標とする「森林と土地利用に関するグラスゴー首脳宣言」に134ヶ国・地域が署名し、森林保護・回復への資金動員にコミットする「グローバル・フォレスト・ファイナンス・プレッジ」には、日本を含む先進国12ヶ国・地域が署名しました。来春の生物多様性のCOP15で、2030年までに各国が陸域と海域の30%を生物保護区にするなどの目標が合意されれば、森林保護・回復に向けた動きは、加速するでしょう。


メタンについては、2030年までに2020年比でメタンを30%以上削減することを約束する「グローバル・メタン・プレッジ(Global Methane Pledge)」が正式発足し、105カ国が発足時加盟国となりました。米国が同時に「メタン排出量削減アクションプラン」を発表し、石油・ガス産業でのメタン漏出削減を強化する規制を打ち出すことなどを表明しています。今後、メタン排出削減も加速するでしょう。


メタンは、CO2の25倍の温暖化能力があり、CO2に換算すると人為起源の温室効果ガスの17%程度を占めています。メタンの発生源としては、石油の製造時漏出、天然ガスの製造や転送・貯蔵時漏出などのエネルギー分野が50%程度を占め、家畜のげっぷや排泄物、稲作などの農業分野が30%強、埋立廃棄物、排水処理などの廃棄物分野が20%弱となっています。


今後、こうしたメタン排出対策の要請が強まるでしょう。日本国内では、メタンは温室効果ガスの2.4%程度と少ないですが、稲作が40%強、牛のげっぷが30%弱など、農業分野が大部分を占めます。今後、こうした分野での取り組みの要請が強まるでしょう。


牛のげっぷについては、海藻を配合したものなどげっぷのメタンを抑える飼料開発が世界的に進められています。稲作に関しては、日本が水田から一時的に水を抜くことで土壌内に存在するメタン生成菌の活動を抑制する「中干し」技術に強みを持っています。エネルギー分野のメタン漏洩防止、廃棄物分野のメタンのエネルギーとしての活用なども含め、メタン排出削減に関連する様々な事業機会があります。


メタン対策が加速することが明らかとなった今、自社の技術などを生かしたメタン削減・活用の機会を探索してみてはどうでしょうか。

閲覧数:24回0件のコメント

最新記事

すべて表示

サステナビリティ推進にあたっての基本の1つは、バリューチェーン全体で考えることです。企業が新たな取り組みを進める場合は、グローバルの3大サステナビリティ課題である気候変動、生物多様性/自然資本、人権を中心に、バリューチェーン全体の環境・社会的影響を考慮する必要があります。 企業の取組みもそうですが、政策においても、バリューチェーン全体の影響を考慮する必要があります。特に、脱炭素の取組みにおいては、

徳島の高校でコオロギパウダーを使った給食を試食で出したことをきっかけに、昆虫食が大きな話題となっています。Twitterなどでは反対意見が圧倒的に多く、理由としては、生乳廃棄や人口減少などの国内事情を踏まえてたんぱく質不足対策としての昆虫食は必要ない、アレルギーなどのリスクがあるといったことがあげられています。 昆虫食開発の背景にあるのは、世界の人口増加および途上国の経済発展に伴い食肉需要が増加す

サステナビリティと経営、非財務と財務を統合して情報開示するツールとして、統合報告がある。統合報告は、サステナビリティ経営に取り組む原則3「自社事業、バリューチェーンに影響を及ぼす課題に対して、戦略的に対応する」を中心に、社内外のステークホルダーにサステナビリティに取り組む経営的意味合いを伝えるために活用すべきものだ。 統合報告の作成プロセスも、経営層をはじめ、社内の様々なステークホルダーとコミュニ

bottom of page