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EUタクソノミーの揺らぎ。サイエンスベースの気候変動対策は寝言なのか?

EUタクソノミーは、EUにおけるサステナビリティ投資を促進する政策の中心にあり、投資対象としてどのような活動がサステナビリティに貢献するのかを定義するものです。タクソノミーに認められる条件としては、①気候変動などの環境目的に大きく貢献すること、②他の環境目的に重大な害を与えないこと(DNSH: Do No Significant Harm)、③最低限の社会的なセーフガード措置に準拠していること(国連人権指導原則の遵守など)、④欧州委員会が定める基準(技術的な判定基準)に準拠していることが挙げられています。

今週、タクソノミーに関して、大きな動きがありました。欧州委員会が、EUタクソノミーに原子力と天然ガスを追加する法案を決定したのです。具体的には、気候変動・適応について対象となる事業の脱炭素に向けた「トランジション」分野として原子力と天然ガスを追加しました。


事故があった場合に大きな被害があり、放射性廃棄物を出す原子力は、DNSHに反するのでは?という点については、適正な安全基準と廃棄物管理の要件を満たすこと、先進技術への期限を定めた移行、高レベル放射性廃棄物の処分施設の稼働計画策定を要件としています。


脱炭素が求められる中天然ガスは環境目的に貢献するのか?という点については、ライフサイクル排出量を1kWh当たり100g未満等とする、2035年までに燃料を天然ガスから再生可能ガス等に切り替えることなどを要件としています。


しかし、厳しい基準を設定しているとはいえ、如何にも政治的妥協に見える原子力、天然ガスの追加については、各方面から反発の声が上がっています。ルクセンブルクとオーストリアは、この決定に反発し、欧州委員会を欧州司法裁判所に提訴すると宣言しました。提訴されると、判決は2023年後半になると想定され、2023年1月1日の法令発効が困難になります。


原子力については、国内に多くの原子力発電所を抱えるフランスやフィンランド、今後導入を計画している中・東欧諸国などが追加を支持する一方、22年の脱原発を進めるドイツなどは反対しています。天然ガスについては、ドイツやギリシャ、石炭からの移行手段と計画する中・東欧諸国が支持する一方、再エネ導入が進むオランダ、デンマークなどは慎重な姿勢を示していました。今回の法令決定後も基本的なスタンスは変わらず、政治的駆け引きは続きそうです。


何がグリーンかを定義する国際基準になるとタクソノミーに期待していた投資家からも、原子力や天然ガスが入ると信頼できる国際基準としては使えないと反発の声が上がっています。タクソノミーが使えなくなったことで、別の分類法を整備する必要があり、市場に混乱を来すなど厳しい意見が出ています。


今後、タクソノミー法案は、欧州議会と欧州閣僚理事会が内容を精査することになりますが、内容を修正するには、議会の過半数が反対する必要があり、反対の声があっても、このまま原子力、天然ガスがグリーンに分類される可能性は高いと見られています。


脱炭素においては、EUがルールメイクを先導してきましたが、今回のタクソノミーでは躓きました。脱炭素の重要性は共有されているものの、足元の経済成長との両立の難しさも目立つようになってきています。ここで政治的妥協が続くと、脱炭素の実現は遠のきます。気候変動については、サイエンスベースで取り組むべきとの声がありますが、政治は現実の市民の声を重視します。


ここで短期的痛みを乗り越えて、長期的な脱炭素に向けて市民の意識を統一するようなリーダーが出てくれば、世界をけん引することができます。日本では、EUタクソノミーへの原子力、天然ガス追加を脱炭素が難しい日本にはプラスと考える向きもありますが、世界をリードする意識も持つ必要があります。


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