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ESG投資からシェアード・バリュー(CSV)投資へ

  • takehikomizukami
  • 2019年12月1日
  • 読了時間: 4分

ESG投資からシェアード・バリュー(CSV)投資へという考えは、以前からマイケル・ポーター、マーク・クラマー氏らにより提唱されていましたが、最近、両氏とジョージ・セラフェィム氏がInstitutional Investor誌に寄稿した論文”Where ESG Fails”は、この考えを体系的に整理しています。概要を簡単に紹介します。


ESG投資よりもシェアード・バリュー投資のほうが投資パフォーマンスに優れる。例えば、CSV銘柄を選定しているFortune Change the World listの銘柄は、MSCI World Stock Indexより年平均3.9%パフォーマンスが良い。ESG投資は、ESGパフォーマンスを幅広い項目で評価しているが、戦略との関連性、財務との因果関係を評価していない。株価とESGパフォーマンスは、相関関係があるという調査結果は多いが、因果関係は明らかではない。


ESG投資は、SRI投資の時代から進化しているが、企業財務にとってマテリアルな項目に絞った評価はできていない。SASBなど業界のマテリアリティを特定する動きは評価できるが、各企業にユニークな戦略ポジショニングは考慮されない。


ソーシャル・イノベーションと経済価値の統合は、戦略を通じてこそなされる。Discoveryの健康と保険を結び付けたビジネスモデルは、優れた例だ。戦略を通じた社会価値と経済価値の統合は、シェアード・バリューの3つのレベルで実現できる。


Level 1:顕在化する社会課題や見過ごされてきた顧客セグメントに対応する新たな製品・サービスを創造する。Creating new products that address emerging social needs or open currently unserved customer segments

例)マスターカードの南アフリカ政府と協働したデビットカードによる金融インクルージョンサービス、Xylemの水道管の漏洩検知センサー&ソフトウェア、ナイキのシューズのアッパー部分を一体成型し製造プロセスの廃棄物を削減するフライニット


Level 2:新たな効率化や従業員・サプライヤー生産性向上の方法を見出し、バリューチェーンの生産性を強化する。Enhancing productivity in the value chain, whether by finding new efficiencies or increasing the productivity of employees and suppliers

例)Fibriaの小規模農家支援を通じた木材サプライチェーン強化、SAB Millerの小規模・家族経営店舗支援を通じた中米での販路拡大、スターバックスの無償の大学教育提供による人材確保


Level 3:事業展開地域のビジネス環境や産業クラスターに投資する。Investing to improve the business environment or industry cluster in the regions where the company operates.

例)BHPのチリでの地域サプライヤーの品質向上投資、HumanaのNPO・政府と協働した健康保険を提供する米国都市の健康向上


これら3つのレベルのシェアード・バリューの取組みは、統合的に推進することでさらなる価値を生み出す。Becton Dickinsonは、医療従事者の安全性を向上するため、HIV感染を防止する針などの製品を開発するとともに、政府やNGOと協働して、病院の安全性を向上させるための政策を促進し、ビジネス環境を向上している。


こうした個々の企業のシェアード・バリューとともに、社会要因が産業構造(5 Forces)にどう影響するかを考慮する必要がある。電力業界は、以前は、発電所の建設に莫大な費用がかかり、電力価格を固定し地域独占を認める政策により、利益が出る構造になっていた。しかし、現在は、規制緩和、再生可能エネルギー技術の進化などで、産業構造は大きく変化している。Enelは、こうした産業構造の変化を見据えて、再生可能エネルギー発電にシフトしている。


投資業界は、ESG投資の考えを変え、シェアード・バリューの考えを取り入れる必要があるが、ほとんどの投資家は、社会課題が株主価値最大化に結び付くとは考えておらず、せいぜいリスク要因と捉えている。そうした中、シェアード・バリューの考えを投資に取り入れる投資会社も出てきている。


英国のGeneration Investment Managementは、「社会へのインパクトは、価値創造の源泉である」と考え、持続可能な低炭素な未来へのロードマップを投資先の選定に活用している。そのために、環境のエキスパートを投資チームに加え、環境インパクトの観点で差別化できる競争戦略を持つ企業を探索している。また、投資視点を強調し、3年間の平均リターンに基づくインセンティブ構造を導入している。スカンジナビアのエクイティファンドSumma Equityは、SDGsの観点で投資機会を特定している。


シェアード・バリュー投資が増えれば、シェアード・バリューへの取組みがスケールされ、社会が良くなり、企業も利益を上げ、投資家もリターンを得るという好循環となる。最近は、アルゴリズムベースの投資が増える傾向にあるのは問題だ。シェアード・バリュー投資により、投資業界にも新たな成長の機会をもたらし、イノベーションが生まれる。

 
 
 

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