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長期視点で戦略性を持ってCSVを進める日本のCSV先進企業、ユニ・チャーム。「財務と非財務の取り組みは表裏一体。社会課題への貢献が社員のモチベーションにもつながる。」

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前回、「「社会的に価値があるものには、必ず市場もあるはず」という信念を持ち粘り強く取り組む。そうした「継続力」を活かしたCSVができることが日本企業の特長ではないか。」と書いて、東レの炭素繊維の事例を紹介しました。


今回は、長期視点でCSVを実践している企業として、ユニ・チャームを取り上げます。


ユニ・チャームの「ユニ」には、「ユニーク」の意味も込められているとのことですが、横並び色が強い企業が多い日本において、ユニークな価値を提供している企業だと思います。


売上は今期1兆円を突破する見通しで、30年までの中期経営計画で「世界一の企業になる」と掲げています。その成長の源泉は、不織布の加工技術の蓄積による商品力と事業ポートフォリオです。生理用品、ベビー用紙おむつ、ペットケア用品、大人用排泄ケア用品を主力商品としていますが、GDPの成長とともにこの順番で商品が普及する事業ポートフォリオとなっています。


ユニ・チャームは、アジアの主要参入各国でトップシェアを獲得していますが、ここ10年ほどは、次の狙いをインドに定めてきました。インドでは知識不足もあって生理用品が普及しておらず、古布などで代用する人が多く、生理中は学校を休んだり外出を控えたりすることが多い状況でした。そのため、衛生用品を普及させることで女性の社会進出を促すことができます。


衛生用品の普及を通じて「女性の社会進出」という社会課題を解決するために、ユニ・チャームが取り組んできているのが、CSVの基本アプローチの1つである「需要創造のCSV」です。需要創造のCSVは、社会に役立つ商品の普及を促進するために、知識啓発、消費者教育等を行う戦略です。


ユニ・チャームは、インドで国際協力機構(JICA)や現地NGOと協力して、女性学生や農村部の女性などを対象に、生理の仕組みやナプキンの使い方を教える初潮教育を地道に進めてきました。教育を受けた女性は累計で60万人に上り、現在はほぼ毎日国内のどこかで授業を開いています。


このような活動を通じて、生理用品に対する知識を広め、自社製品の普及につなげています。初潮教育を実施しながら、近くの店舗に自社商品を置いてもらい販路を築いていて、ユニ・チャームが初潮教育を実施した地域では、1店舗当たりの生理用品の売上が農村部平均の2倍以上となっています。


一方、日本では、超高齢化社会に対応するため、「排泄ケア」に注力しています。排泄ケアは、食事、入浴とならぶ三大介護のひとつで、自立して排泄できるかどうかは非常に重要な社会課題です。ユニ・チャームは、適切な排泄ケアを行うことで、寝たきりを防ぎ、人々の健康寿命を延ばすことを目的に、世界初の高齢者用「ライフリーリハビリパンツ」を1995年に発売、改良を重ねています。また、製品の提供と併せて、介護施設に専門のプロケア営業員とケアアドバイザーを派遣し、正しい商品知識の啓発や排泄ケアの改善を介護施設のスタッフと一緒に行っていくライフリーケア活動を実施しています。


ライフリーケア活動などを通じて、排泄ケアの知識やリハビリパンツの使用は恥ずかしいものではないという知識を普及しています。また、介護の現場で活動することを通じて、介護における課題を発見、解決策を検討し、改善につなげています。


ユニ・チャームがこうしたCSVを進める背景には、長期視点の経営があります。高原社長は言っています。「企業の価値には財務的な価値だけでなく、非財務の絶対価値(普遍的な価値)もあります。財務と非財務の取り組みは表裏一体の関係で、社会課題への貢献が社員のモチベーションにもつながっています。最初は全然もうからないんですよ。それでもロングスパンで取り組み続けると、社員の思いのベクトルが事業と一致してきます。社会貢献するという意識が、私にも社員にも強くあり、課題解決をビジネスにして世界一を目指します。その実感を得られる構造をつくると、普通の状態よりも馬力を出せるのです。」


ユニ・チャームは、需要創造のCSVなど長期視点の戦略性を持って社会課題解決を進めていますが、それが社員のエンゲージメントにつながり、長期的な競争力の源泉となっています。


(参考)「最難関のインド市場攻略。「共振の経営」に再評価」日経ビジネス2024.10.21号

 
 
 

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