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資本主義システムをどう変えるか。目的・価値観の転換と共有領域の拡大。

資本主義の特徴は、私有財産、利潤動機、市場経済などにあるとされる。私有財産に価格を付けて商品化し、お金を儲けることを動機とし、市場での取引を増やすことを通じて経済的な豊かさを広げようとするシステムだ。


基本思想は、経済的豊かさが広がれば衣食住など基本的欲求が満たされ、争いや犯罪も減り良い社会が築かれるというものだ。競争原理が働き、世の中の進歩を促すことも分かっている。


一方で、経済的豊かさを追求することが経済成長を自己目的化し、成長のプレッシャーのもと利潤動機が強く働き過ぎ、商品を生み出すために資源を採掘、森林を伐採しながら廃棄物は処理せず環境を破壊し、安価に生産するため労働力を搾取し人権侵害や格差を生み出している。カーボンプライシングなど環境影響に価格を付けることで対応しようとする対症療法的動きもあるが、構造的な問題解決にはつながらないだろう。


資本主義の問題解決に向けたアプローチとしては、①目的・価値観を変える、②共有領域を増やす、などが考えられる。


「目的・価値観を変える」は、資本主義の商品取引において中心的な役割を担う企業が、利益や成長ではなく「社会に価値を生み出すこと」をパーパスに掲げ、その実現のために経営を行うようにすることだ。世の中の評価軸も、お金持ちを評価するのではなく、社会に価値を生み出す人をより評価・賞賛するように変えていく必要がある。そうすれば、利潤動機ではなく「社会価値創造動機」が新たな資本主義システムのドライバーとなる。これが機能すれば、世の中の進歩・イノベーションを生み出しつつ、環境問題を解決し、より平等かつ本質的に豊かさを広げることができるはずだ。


B Corpムーブメントなど目的・価値観転換の萌芽はあるが、利潤動機・経済成長を前提に構築された現在の制度・仕組みを変えていくには時間がかかるだろう。しかし、価値観の転換に向けた運動は継続していかなければならない。初期的な取組としては、CSVの考え方や事例を広げていくことも有効だと考える。


「共有領域を増やす」について、環境面ではより多くの自然環境を共有財産とし経済目的での開発を制限する。生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で、世界の生物多様性と生態系サービスにとって特に重要である「陸域」「淡水域」「海域」の30%を効果的に保全・管理するという目標が盛り込まれたが、こうした動きを促進していく。


また、現在の資本主義のもとではお金があれば大概のことはできるが、逆にお金がないと生きていけない。これでは困る。お金がなくても最低限の生活ができるよう、コミュニティなどによる共有財産を分かち合えるようにすべきだ。資本主義システムと共存するサブシステムのような形で社会面、生活面での共有領域を増やしていきたい。


現在の資本主義が転換点を迎えていることは、多くの人々が感じとっている。しかし、資本主義以外のシステムでは、80億人以上の人々に一定の豊かさを提供し、人類の進歩を継続していくことは難しいだろうとも考えている。資本主義システムの良さは生かしつつ、顕在化した問題を解決しようとする動きは続くだろう。

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