販促会議10月号に「販促担当者が知っておきたいサステナビリティの現在地」という記事を書きました。楽天インサイトの「サステナブルな買い物に関する調査」の結果も踏まえつつ、新型コロナ禍でサステナブルな方向にシフトした消費者の生活スタイルを、如何に定着・促進するか、考え方を示しました。
「サステナブルな買い物に関する調査」では、調査対象の消費者の3割以上が、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて、「サステナブルな買い物」に対する意識が「強まったと思う」「やや強まったと思う」と回答しています。また、「個人の幸せだけでなく社会全体のことを考えていきたい」という人が増えているという結果になっています。
こうした調査結果にも示されていますが、新型コロナにより、消費者の生活スタイルは、サステナブルな方向にシフトしています。今後、経済活動が再始動する中でもこうした流れを維持することが求められます。政策的には、グリーンリカバリーなど、新型コロナからの経済再生に向けた投資を気候変動などの環境課題解決に向かわせようとする動きがあります。しかし、世界が本格的に経済と環境の両立に向けて変化するかは、消費者、企業の行動がカギを握っています。
消費者は、アンケートで問われれば、「環境に配慮した商品を優先的に購入する」と回答しますが、実態は、その通りにはなっていません。サステナブルな商品は、まだそのままで売れる状況にはなく、サステナブルな商品が売れる仕組み、サステナブルな商品が売れるようなマーケティングが必要ということです。
サステナブルな商品が売れる仕組みづくりの方法として、ルールメイキングがあります。サステナブルな商品の販売を促進する政策、サステナブルな商品を可視化する認証制度などを通じて、消費者の意識、購買行動を刺激します。
サステナブルな商品販売が利益を生むビジネスモデルの創造もあります。使用頻度の少ない商品をシェアすることは、生産量を減らし、環境負荷を軽減します。アズ・ア・サービスでは、商品を長寿命化することが企業にとってのコスト削減となり、環境負荷軽減にもつながります。
サステナブルな商品のマーケティングで、消費者の意識を変え、行動を変え、習慣として根付かせることも必要です。そのために、「ソーシャル・ノームを創る」という方法があります。サステナブルな商品の購入を社会の当たり前にすることで、「欧州では、環境に優しい商品を購入するのが当たり前になっている」などと伝え、サステナブルな行動について、当然の行動だ、それが社会規範だという意識を持たせます。消費者の行動を周りから見えるようにすること、社会的なグループ間の健全な競争を促すなどで、ソーシャル・ノームの効果を強化することができます。
ソーシャル・ノームを創り、広めることで、消費者の意識を変えた上で、キャンペーンやインセンティブで、消費者の購買行動を変えることが重要です。その場合、消費者はこれまでと大きくことなる商品の購買には抵抗があるため。馴染みのあるものを少し変えた商品だという印象を持たせる工夫も必要です。「カリフォルニア―ロールの原則」というものがあります。生魚を食べる習慣のない米国人に寿司を受け入れてもらうため、馴染みのあるキュウリやアボガドといった食材を組み合わせ、外側に米が見えるようにするなどの工夫をすることで、身近な食物と感じてもらい、寿司を普及させることができたというものです。サステナブルな商品も、特別なものではなく、馴染みのある商品という意識を持ってもらう工夫が必要です。
そして、最初の購買を促した後、日常的に継続的にサステナブルな商品を購買の当たり前にし、習慣化できれば、サステナブルな商品は本格的に定着します。1つのサステナブルな商品を購買するようになれば、他のサステナブルな商品を購入するドミノ効果も期待できます。さらには、生活スタイル全体がサステナブルになっていくことも期待できます。
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