イスラエルでは、世界の水資源が不足している地域で、海水を飲料水や灌漑用水に転換するビジネスを展開するIDEテクノロジーズに代表されるように、水問題を解決する技術が発展し、多くの企業が水関連ビジネスを展開しています。
イスラエルで水技術が発展しているのは、イスラエルが水の課題先進国だからです。国土の60%が荒野で、淡水の水源は限られ、降水量も少ないイスラエルは、昔から水問題に苦しんできました。有名なフォークダンスソング「マイム・マイム」の「マイム」はヘブライ語で「水」を意味しており、この曲は掘り当てた井戸のまわりを踊り、喜びをもって水に駆け寄るユダヤ人の姿をあらわしているそうです。それほどまでに、イスラエルには、水がありませんでした。
水不足に苦しむ中、イスラエル人は、何とかして水の供給量を増やし、水を効率利用しようと工夫し、淡水化、水再生、点滴灌漑など様々な水技術を発展させました。現在、イスラエルでは、飲料水は6割以上が海水から作られているとのことです。生活排水は約85%を浄化し、農業用水として再利用しており、2位スペインの20%を大きく引き離しています。今後は、生活排水を飲料水としても利用していく予定です。
イスラエルでは、IEDテクノロジーズなどの大企業に加え、水技術のスタートアップも多く誕生していますが、イスラエルの政府と企業は、人口増加・気候変動などの影響により世界的に水不足が深刻になりつつある中、これまで国内で培ってきた水技術を強みとしてビジネスをグローバルに展開しようとしています。イスラエル政府は、そのために、WATECという国際水環境技術博を毎年開催し、イスラエルの水技術をアピールしています。
日本も高齢化、人口減少に起因する課題をはじめ、地震や台風などの自然災害、地形等の関係で自然エネルギーの調達が難しい等様々な課題を抱えていますが、テクノロジー、ビジネスモデル、政策的枠組みなど、課題解決のためのソリューションを磨いていけば、それを強みとして、世界に展開できる可能性は大いにあります。すでに強みとして展開できるものもあるでしょう。そうしたものを、同様な課題を抱える国・地域に展開していくべきです。
地域レベルでも、それぞれ特有の課題を抱えていると思いますし、課題解決で磨かれた、それぞれの地域特有の強みを持っているはずです。そうした強みを洗い出し、同様な課題を抱える地域に広く展開することを考えてみるべきです。それが、新たな分業、新たな価値を生み出すでしょう。
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