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自社の強みを生かしたCSVビジネス創出に向け、社会課題の解決策が生み出す次の課題を考える。EVの事例から。

CSVは、未解決の社会課題にビジネスを通じて解決策を提示するものです。社会課題に関する課題と解決策の新しい組み合わせを提示するものでもあります。


企業が社会課題と解決策の組み合わせを考えるにあたっては、社会課題に自社の強みを当て嵌めて製品・サービスを生み出すことがまずは基本となります。自社の強みをもって差別化できるものでなければ、製品・サービスのCSVが、新規事業として成功する可能性は小さいでしょう。


社会課題と自社の強みを組み合わせるには、課題を構造的に広くとらえる視点を持つことが重要です。そうした視点の一つが「課題の解決策が生み出す課題」です。課題の解決策は、必ず次の課題を生み出します。


例えば、モビリティの脱炭素という社会課題に対して、有望な解決策としてEVが提示されています。EVという解決策に関連する課題としては、「EVを広げるための課題」として、航続距離、充電時間などがまず提示されました。これらについては、バッテリーの高性能化や充電ステーションの整備が進められています。運輸・物流領域を中心にバッテリーの交換システムなども検討されています。EVが普及しはじめると、中古車に影響するバッテリー寿命にも関心が集まるようになりました。バッテリー部材などの地政学リスクも注目されています。


こうした「解決策を広げるための課題」も重要ですが、「解決策が生み出す次の課題」の視点も重要です。EVに関しては、LCAの低減、電池部材のリサイクルなどの課題がまず挙げられますが、EVの重量やそれが生み出す課題も次の課題と言えるでしょう。


EVの重量は航続距離に比例して重くなっており、航続距離の長いEVではガソリン車の倍近い重さとなっています。車が重くなると事故の際の被害が大きくなる傾向にあります。また、重い車体はタイヤに負担をかけ、摩耗で生じる粉塵が増加します。OECDによれば、摩耗により生じる粒子状物質「PM10」や「PM2.5」は、ガソリン車からEVへの移行で3割程度増えるとのことです。これ以外にもEVが生み出す「次の課題」はたくさんあるでしょう。


今回はEVの例を示しましたが、すべての社会課題の解決策は、必ず次の課題を生み出します。様々な社会課題の解決策が生み出す次の課題の視点を持つことで、自社が強みを生かして差別化できるビジネス機会を見つけることができるでしょう。

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