最近は、サステナビリティ領域では、「ブルーエコノミー」「ブルーカーボン」といった言葉が広がっているように、海洋生態系の持続可能性が注目されています。SDGsの目標14です。
海洋生態系の持続可能性に関して、喫緊の課題となっているのが、海洋プラスチック汚染と水産資源の維持・回復です。
海洋プラスチックについては、本年3月の国連環境会議で、2024年を目標に、法的拘束力のある国際的なプラスチック規制のための条約を作ることが決議されています。2-3年後には、海洋プラスチックに関する国際的な規制が強化されるのは、確実です。
海洋プラスチック問題は、過去50年間で生産量が20倍に増大した大量のプラスチックの8割近くが廃棄される中、一部が海洋に流れ込んでいるものだ(8割以上が陸上からの流入。その他は漁具など)。ウミガメの50%以上、海鳥の90%以上がプラスチックごみを摂取するなど、海洋生態系に大きな影響を及ぼしています。また、プラスチックは細かくはなっても自然分解することはなく、マイクロプラスチックとして数百年以上漂い続けると考えられ、長期にわたってのマイクロプラスチックの生態系や人体への影響も懸念されています。
海洋プラスチックは今後も増え続け、2050年には、「海洋プラスチックごみの量が海にいる魚を上回る」と予測されており、世界的に使い捨てプラスチック禁止などの動きがありますが、企業でも様々な取り組みが行われています。
海洋プラスチックを回収・再利用する取り組みも進んでおり、廃棄漁網を化学繊維として再利用しカーペットなどを製造することや、海洋プラスチックからアパレル製品を生産することなどが行われています。アディダスが、環境保護団体と協働して開発した海洋プラスチック製シューズは、社会課題を解決しているというブランドイメージの向上に寄与するとともに、優れたデザイン性から数百万足売れるヒット商品となっています。アパレルなどから始まった海洋プラスチックを素材とする動きは、電機製品、自動車部品などにも広がっています。
興味深い取り組みとして、プラスチックバンクが、海洋プラスチックの原因となる廃棄物管理の基本的施設がない途上国で、プラスチック回収を仕事として雇用を生み出している例があります。途上国の人々が回収したプラスチックを購入して、3Dプリント材料に変え、3Dプリンターで製品化して販売しています。海洋プラスチック問題を解決しつつ、途上国の貧困問題にも対応する優れた取り組みです。
水産資源の維持・回復に関して、進化が期待されているのが養殖です。絶滅危惧種のマグロなどの養殖が進んでいます。しかし、養殖にも、エサのタンパク質をどう供給するか、養殖の余ったエサや排泄物などよる海洋汚染をどう防ぐかなど、様々な課題があります。
養殖に必要なエサには、カタクチイワシなどが用いられますが、養殖魚のために大量の水産資源を使うことは、乱獲につながり持続可能ではありません。そこで、成長が早くタンパク質を多く含む昆虫を養殖魚のエサにしようとする動きがあります。昆虫は、環境負荷が小さいタンパク源として注目されていますが、人が食べるものとしては、抵抗を持つ人も多く普及には時間がかかるでしょう。しかし、養殖魚のエサにすることに抵抗を持つ人は少ないでしょう。
また、養殖魚にエサを与えすぎることは、タンパク源をムダにするとともに、海洋汚染につながります。そこで、データに基づき給餌量などを最適化するスマート養殖の取り組みが進められています。スマート養殖では、給餌量に加え、IoTセンサーを活用して、水温、酸素濃度、塩分などの環境データを自動測定し、養殖を効率化しています。ドローンを活用した早期の赤潮検知なども行われています。
絶滅危惧種のマグロやウナギは、そもそも食べないようにしようという動きもあります。クロマグロに近い味で、タンパク質や脂質の含有量もクロマグロとほぼ同じというスマというサバ科の魚を養殖しようという動きがあります。スマは、クロマグロよりも養殖しやすく、クロマグロの出荷時の体重が50kgほどになるのに対し、スマは3-4kg程度で、大きな養殖場や配送設備を用意する必要がありません。
ウナギについては、「ウナギ風味のナマズ」の開発が進めています。養殖ナマズのエサを工夫することで、ウナギに似た風味のナマズを作り出そうとするものです。草食魚のナマズは、他の稚魚や魚粉をエサにする魚に比べ、資源の持続可能性に貢献します。その他、プラントベースの代替魚肉なども開発されています。
最後に、私の地元富山県氷見市の宣伝をすると、寒ブリが全国ブランドになっていますが、
氷見の寒ブリの大部分は、定置網で捕っています。定置網は、集まって来る魚を待ち受け、成長前の小さな魚を逃し、網に入る魚の2割程度のみを捕獲する持続可能な漁法です。この持続可能な漁法である定置網は、氷見が発祥の地です。
これからますます注目される海洋生態系の持続可能ですが、海に囲まれた日本では、地方創生と関連づけた取り組みのポテンシャルも大きいと思います。個人的にも追求していきたいと考えているテーマです。
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