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洪水・干ばつ、海面上昇、病原菌、暴力-気候変動の多様な影響を理解する

今年8月に発表されたIPCC第6次評価報告書の作業部会報告書(自然科学的根拠)では、人間活動が地球を温暖化させていることは「疑う余地がない」とされています。人間活動が、CO2を中心とした温室効果ガス(GHG)を大量に発生し、大気中のGHG濃度が増大し、それが地球温暖化を促進していることは、これまでも確実視されてきましたが、「疑う余地がない」ということで、もうそこの議論は、終わったということでしょう。


一方で温暖化がもたらす影響については、50年に一度の暑い日は、産業革命前に比べて、既に1℃上昇している現在では4.8倍になっており、1.5度上昇では8.6倍、2度上昇では13.9倍、4度上昇では39.2倍なるということです。熱い日がかなり多くなるのは間違いなさそうです。


また、熱波、激しい降水、干ばつ、氷河や北極圏の海氷の後退、海面上昇によるより頻繁な沿岸部の洪水や海岸浸食、海洋酸性化、熱帯低気圧の強大化などに人為的な気候変動の影響が認められととしています。


海面上昇は、1.5度に抑えるシナリオでも2100年には28~55センチ上昇し、最も高いシナリオでは最大1メートルに達するということです。2300年には低いシナリオでも0.5~3m、高いシナリオでは2~7mの上昇が予測されています。沿岸部や島しょ地域を中心に、大きな影響がありそうです。


気温上昇、洪水、暴風雨などが増えることは、日本でもすでに起こっていることで、これがさらに酷くなるということは、避けるべきものです。しかし、影響はこれにとどまらないでしょう。


温暖化により、蚊などの媒介動物の分布域が広がり、マラリアやデング熱など感染症の動物が媒介する感染症が拡大することが懸念されています。WHOは、30~50年に気候変動により年間死亡者が約25万人増えると予測していますが、熱中症の増加などとともに、感染症の拡大を主な原因に挙げています。


また、温暖化によりシベリアなどの永久凍土の融解が懸念されていますが、永久凍土の中には多くの未知のウイルスが眠っていると考えられています。実際に、最近、永久凍土から高い増殖能力を持つ新種のウイルス が発見されています。


さらに、高温に耐性のある病原菌が繁殖し、これまで病原体から身を守っていた体温の壁が破られることも懸念されています。ヒトの体温が温暖化に適応してすぐに上がることは考えられませんが、微生物やウイルスは世代交代が早く、温暖化に適応する進化が早く起こる可能性があります。


温暖化のヒトの行動への影響も指摘されています。暑い日が続くと、交通事故、溺死、暴行などの死亡者が増えるとの研究結果があります。温暖化で、「車を使う人が増えて交通量が増加する」「飲酒量が増えて運転に支障を来す」「暑くなるとストレスがたまって暴行が増える」などが指摘されています。


そもそも温暖化の原因であるGHGの多くは、先進国がこれまで排出してきており、温暖化の影響は、温暖化への適応策が未整備の途上国の人たちが被る傾向にあります。こうした温暖化が生み出す不平等や格差、また温暖化により増えると考えられる難民を巡る対応などが、人々の分断を生む恐れがあります。


これから気候変動対策が具体的に進められていくと、2018年にフランスで、炭素税の1種である燃料税の引き上げをきっかけに政権への反発が広がり、黄色いベスト運動と呼ばれる反政府の抗議活動が国中に広まったように、反発が起こる可能性もあります。黄色いベスト運動でも多くの死傷者が出ましたが、気候変動を巡る様々な対立は、暴力につながる可能性があります。


人間活動が気候変動に及ぼす影響は「疑う余地がない」とされましてが、気候変動が人間活動に及ぼす影響については、不確実性があります。すでに顕在化している暴風雨、洪水、干ばつなどの影響に加え、長期的には、海面上昇、病原菌の広がりなども懸念されます。それ以上に、人々の対立や暴力に及ぼす影響のほうが懸念すべきかも知れません。


人類がこの危機を乗り越えることができるか、まずは、気候変が人間活動にどう影響するか、その影響の広がりの可能性を理解し、共有する必要があります。

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