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本質的な人的資本強化には、経営への「統合」が重要

最近、人的資本が注目されています。昔から、ヒト、モノ、カネと言われ、人材が最も重要なと財産と語る経営者も多くいました。何故、今になって人的資本が注目されているのでしょうか?


「無形資産が企業価値に占める比率が高まった」、「企業のビジネスモデルが製造業から知識労働に移行し、価値の源泉である人材の重要性が高まった」といった論調もありますが、こうした変化も20年くらい前から言われているものであり、最近起こったものではありません。


最近のESGの潮流の中、SECが2020年、上場企業に人的資本の情報開示を決め、日本でも、政府が人的資本の情報開示を企業に求め、来年度から有価証券報告書への記載が義務付けられる見込みであることが、最近人的資本が注目される背景にあります。


企業価値に占める無形資産の割合を示すオーシャン・トモのデータで、米国では無形資産の割合が90%を占めるのに対し、日本は32%となっており、知的資産の価値向上やその源泉となる人的資本の強化が、日本企業の企業価値向上の大きな課題と考えられることもあるでしょう。


日本政府が求める人的資本の情報開示案として、人材育成、多様性、健康安全、労働慣行に関する19項目を示していますが、これらを開示するだけでは、本質的な企業価値向上につながるわけではありません。実際に長期的な価値を生み出す人的資本強化につなげる必要があります。そのために重要なのは、「パーパス」「ビジネスモデル」「バリュー」などとの「統合」です。


人的資本戦略を含むすべての戦略は、パーパスと整合している必要があります。パーパス(存在目的)-ビジョン(長期的に目指す姿)-経営戦略(As-isからTo-beに向けた全体戦略)-人的資本戦略が、しっかり統合されていることが重要です。もちろん、イノベーションに関する人的資本強化にあたっては、パーパスービジョン―経営戦略-知的資本戦略-人的資本戦略が統合されている必要がありますし、サステナビリティに関する人的資本強化にあたっては、パーパスービジョン―経営戦略-サステナビリティ戦略-人的資本戦略が統合されている必要があります。人的資本戦略は、すべての事業戦略、機能戦略と結びついています。


また、差別化が求められる今の時代では、自社ならではの価値を生み出すことが重要です。パーパスにも独自性が求められますが、独自性のあるビジネスモデル、独自性のあるバリュー(Values=組織の価値観、行動規範)を持つことが期待されます。そうした独自性のあるビジネスモデルを強化するための人的資本の強化、バリューを基本とした人的資本強化が必要です。バリューに関しては、ソフトスキルにおける自社とのフィットネスを評価する基軸であり、バリューを本質的に浸透させること自体が、人的資本強化の重要な要素となります。


そして、普遍性のあるパーパス、バリューを中心に一貫性を持って、長期的に人的資本強化に取り組むことも重要です。一貫性を持った持続的な取り組みが、長期的な企業価値を生み出します。


こうした経営に統合された人的資本強化の取り組みは、人事担当だけで進めることは、不可能です。経営レベルの重要マターとして、関係者と連携しながら、取り組む必要があります。そのための体制づくりも、今後の課題となるでしょう。


本質的な人的資本強化に取り組む企業が増え、「組織に依存」、「同質的」、「意思決定に時間がかかる」、「リスクを取らない」などの日本企業の無形資産価値を高める上での障壁となっている課題が解決されていくことを期待します。



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