top of page
検索
  • takehikomizukami

昆虫食への関心を、昆虫食普及の機会にできるか。

徳島の高校でコオロギパウダーを使った給食を試食で出したことをきっかけに、昆虫食が大きな話題となっています。Twitterなどでは反対意見が圧倒的に多く、理由としては、生乳廃棄や人口減少などの国内事情を踏まえてたんぱく質不足対策としての昆虫食は必要ない、アレルギーなどのリスクがあるといったことがあげられています。


昆虫食開発の背景にあるのは、世界の人口増加および途上国の経済発展に伴い食肉需要が増加することが見込まれる一方で、現在の畜産は環境負荷が大きく持続可能ではないということです。80億人を超えた人口は100億人程度までは増加すると予測されており、たんぱく源を増やすことが必要です。


しかし、牛だけでも10億頭が飼育されている畜産は、メタンの排出などにより世界の温室効果ガスの14%程度を占めるとされ、土地利用でも世界の陸地の26%を占めているとされます。カーボンニュートラルや生態系保全の必要性が叫ばれる中、今後のたんぱく源を現在の形の畜産に依存することはできないとして、植物肉、培養肉、低環境負荷養殖などの新しいたんぱく源の開発が進められています。


タンパク質1㎏あたりの温室効果ガス排出量が、牛2,800g、豚1,100g、鶏300gに対して、コオロギはわずか100gと、環境負荷の小さいコオロギなどの昆虫食の開発も、その流れで進められています。


しかし、今回の騒動で、昆虫食に対する心理的抵抗、「フードネオフォビア」は非常に大きいことが示されました。一方で、昆虫食に対する関心が高まったことは、普及の機会にもなりえます。ネガティブな意見が多い状況ではありますが、一部の方でも関心を持ち、試してみようかと思うようになれば、市場が広がるきっかけになる可能性もあります。


昆虫食にはやはり抵抗があるという方でも、これを機会に食料システムの気候変動への影響に関心を持つようになり、週1回肉食を控えるミートフリーマンデーでもやってみようかという人が出てくれば、気候変動対策の観点からは、望ましい流れとなります。


しかしながら、ネガティブな意見が大半を占める中、昆虫食推進の立場の人たちが、コミュニケーションを間違えると、日本の昆虫食の歩みが一時ストップしてしまうリスクもあります。


昆虫食を推進されている方々は、今回の反応を真摯に受け止め、ファクトベースで、透明性を持ってコミュニケーションし、自分たちの考えや思いをしっかり伝える必要があるでしょう。


閲覧数:21回0件のコメント

最新記事

すべて表示

サステナビリティやステークホルダー資本主義の議論になると、必ず新自由主義の象徴とも言えるミルトン・フリードマンが引用されます。 拙著「サステナビリティ -SDGs以後の最重要戦略」でも、フリードマンの「企業経営者の 使命は株主利益の最大化であり、それ以外の社会的責任を引き受ける傾向が強まることほど、自由社会にとって危険なことはない」という言葉を引用しています。そして、効率的な市場を通じて世界を豊か

最近は、ジャニーズのニュースを見ない日はありませんが、この問題は、企業が人権への対応を考える良い機会となっています。 9/7のジャニーズ事務所の会見を受けて、アサヒグループHDは、いち早くジャニーズ事務所のタレントを広告に起用しない方針を発表しました。勝木社長は、ジャニー氏の行状は容認しがたく、「2019年に策定したグループの人権方針に照らせば、取引を継続すれば我々が人権侵害に寛容であるということ

最近は、ESGの文脈で非財務と財務の関係性を分析することが流行っているようだ。ESGの取り組みと企業価値との相関関係を重回帰分析するツール、非財務要素がどう財務価値につながるかの因果関係をロジックツリーのように示す方法などが提示されている。 しかし、こうした方法やツールは、自社のこれまでの取り組みを肯定する、ESGで先進的な取り組みをしているように見せる、といったことに使うだけでは意味がない。実際

bottom of page