top of page
検索
  • takehikomizukami

日本は脱炭素の機会をもっと広く捉えるべきでは

脱炭素が、東洋経済、ダイヤモンド、エコノミスト、日経ビジネスと、主経済紙で連続して特集されている。これまで、サステナビリティ関係はたまに特集されることはあったが、正直売れるテーマではなかったと思う。このように主要経済誌で軒並み特集されるというのは、このテーマが日本経済界の最大の関心事の一つとなっていることを示している。


各誌の内容を見ると、日本経済界の最大の関心事はエネルギー源をどうするかにあるようだ。再エネをどこまで増やすのか、電池は使えるようになるのか、水素やアンモニアは本当に使えるようになるのか、その辺が最大の関心事のようだ。


日本の重要産業である自動車業界は、EVシフトが鮮明であり、全個体電池の開発に注目が集まる。FCVに関していえば、水素の調達と供給が課題となる。水素還元が期待される鉄鋼などその他の主要産業でも水素は注目されている。


上記のように日本の脱炭素で注目されているのは、再エネ、電池、水素・アンモニアにつきるようだ。これに、エネルギー源に関連するCCUSと原発(小型炉)を加えても良いかもしれない。


日本政府の「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」では、成長が期待される14の産業分野を挙げた幅広い内容になっているように見えるが、やはり洋上風力などの再エネ、電池、水素・アンモニアなどを重視している印象を受ける。


一方、欧州の戦略はどうか。グリーンディールを見てみよう。

欧州グリーンディールは、気候変動、エネルギー、クリーンでサーキュラーな産業、建築、モビリティ、食品、生物多様性、有害化学物質8つの環境政策分野とそれを支える金融分野から構成されている。


気候変動やエネルギーなど、日本の脱炭素の文脈と共通する部分もあるが、サーキュラー、食品、生物多様性など、その対象範囲は広い。さらに、サーキュラーエコノミーアクションプラン、食品のFarm to Fork(農場から食卓まで)戦略など具体的な戦略を示して、取組みを進めている。これに、金融分野では、政府主導のサステナブル投資計画に加え、民間のサステナブルファイナンスを推進するためのサステナブルファイナンス・アクションプランを進めている。


幅広い分野でサステナビリティに関心が高い欧州は、多様な産業、多様な視点でサステナビリティによる成長を考えているようだ。


日本は、サステナビリティについては出遅れている上に、再エネ、電池、水素・エネルギーと脱炭素の対象領域を狭く捉えては、日本が培ってきた多様な産業基盤を十分に生かせない可能性もある。政府の役割も重要だが、個々の企業において、サステナビリティを広く捉え、自社の強みを生かせる領域、自社の将来の成長の源泉となる領域を検討すべきだろう。

閲覧数:30回0件のコメント

最新記事

すべて表示

サステナビリティやステークホルダー資本主義の議論になると、必ず新自由主義の象徴とも言えるミルトン・フリードマンが引用されます。 拙著「サステナビリティ -SDGs以後の最重要戦略」でも、フリードマンの「企業経営者の 使命は株主利益の最大化であり、それ以外の社会的責任を引き受ける傾向が強まることほど、自由社会にとって危険なことはない」という言葉を引用しています。そして、効率的な市場を通じて世界を豊か

最近は、ジャニーズのニュースを見ない日はありませんが、この問題は、企業が人権への対応を考える良い機会となっています。 9/7のジャニーズ事務所の会見を受けて、アサヒグループHDは、いち早くジャニーズ事務所のタレントを広告に起用しない方針を発表しました。勝木社長は、ジャニー氏の行状は容認しがたく、「2019年に策定したグループの人権方針に照らせば、取引を継続すれば我々が人権侵害に寛容であるということ

最近は、ESGの文脈で非財務と財務の関係性を分析することが流行っているようだ。ESGの取り組みと企業価値との相関関係を重回帰分析するツール、非財務要素がどう財務価値につながるかの因果関係をロジックツリーのように示す方法などが提示されている。 しかし、こうした方法やツールは、自社のこれまでの取り組みを肯定する、ESGで先進的な取り組みをしているように見せる、といったことに使うだけでは意味がない。実際

bottom of page