top of page
検索

日本は脱炭素の機会をもっと広く捉えるべきでは

  • takehikomizukami
  • 2021年3月6日
  • 読了時間: 3分

脱炭素が、東洋経済、ダイヤモンド、エコノミスト、日経ビジネスと、主経済紙で連続して特集されている。これまで、サステナビリティ関係はたまに特集されることはあったが、正直売れるテーマではなかったと思う。このように主要経済誌で軒並み特集されるというのは、このテーマが日本経済界の最大の関心事の一つとなっていることを示している。


各誌の内容を見ると、日本経済界の最大の関心事はエネルギー源をどうするかにあるようだ。再エネをどこまで増やすのか、電池は使えるようになるのか、水素やアンモニアは本当に使えるようになるのか、その辺が最大の関心事のようだ。


日本の重要産業である自動車業界は、EVシフトが鮮明であり、全個体電池の開発に注目が集まる。FCVに関していえば、水素の調達と供給が課題となる。水素還元が期待される鉄鋼などその他の主要産業でも水素は注目されている。


上記のように日本の脱炭素で注目されているのは、再エネ、電池、水素・アンモニアにつきるようだ。これに、エネルギー源に関連するCCUSと原発(小型炉)を加えても良いかもしれない。


日本政府の「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」では、成長が期待される14の産業分野を挙げた幅広い内容になっているように見えるが、やはり洋上風力などの再エネ、電池、水素・アンモニアなどを重視している印象を受ける。


一方、欧州の戦略はどうか。グリーンディールを見てみよう。

欧州グリーンディールは、気候変動、エネルギー、クリーンでサーキュラーな産業、建築、モビリティ、食品、生物多様性、有害化学物質8つの環境政策分野とそれを支える金融分野から構成されている。


気候変動やエネルギーなど、日本の脱炭素の文脈と共通する部分もあるが、サーキュラー、食品、生物多様性など、その対象範囲は広い。さらに、サーキュラーエコノミーアクションプラン、食品のFarm to Fork(農場から食卓まで)戦略など具体的な戦略を示して、取組みを進めている。これに、金融分野では、政府主導のサステナブル投資計画に加え、民間のサステナブルファイナンスを推進するためのサステナブルファイナンス・アクションプランを進めている。


幅広い分野でサステナビリティに関心が高い欧州は、多様な産業、多様な視点でサステナビリティによる成長を考えているようだ。


日本は、サステナビリティについては出遅れている上に、再エネ、電池、水素・エネルギーと脱炭素の対象領域を狭く捉えては、日本が培ってきた多様な産業基盤を十分に生かせない可能性もある。政府の役割も重要だが、個々の企業において、サステナビリティを広く捉え、自社の強みを生かせる領域、自社の将来の成長の源泉となる領域を検討すべきだろう。

 
 
 

最新記事

すべて表示
サステナビリティ目標達成のために避けるべき誤り-企業がサステナビリティ目標を達成する能力を損なう7つの指標

過去20年間で、企業はサステナビリティに対して野心的なコミットメントを行うことについては、大きく前進した。経営幹部の68パーセントがしっかりとしたサステナビリティ計画を策定していると答え、公開している大企業の89パーセントがネット・ゼロのコミットメントを行っている。しかし、...

 
 
 
トランプ関税の影響でサプライチェーンが変化した場合、サプライチェーンのESGデータ収集、スコープ3を含む脱炭素目標の開示や実践、人権デューデリジェンスなどにも影響が出てくる。

キーポイント ・    関税によるサプライチェーンのシフトは、バリューチェーンの影響に関するデータを収集する企業の能力に影響を与え、炭素開示目標のタイムフレームをシフトさせる可能性がある。 ・    サプライチェーンが場所を移動した場合、人権への取り組みや倫理的なビジネス慣...

 
 
 
能登の復興において「集約化」の議論があるが、生物多様性とのアナロジーから考えても、地域の多様性を安直な経済合理性だけで喪失させてはならない。

能登半島地震からの復興に関して、もとに戻すのではなく地域を集約化して新しいまちづくりをしていくべきとの意見がかなりあるようだ。人口減少、高齢化が進む過疎地をもとに戻すのは行政コストの面などから適当ではないとの考えだ。しかし私は、生物多様性のアナロジーで考える地域多様性の価値...

 
 
 

Comments


Copyright(c) 2019 Takehiko Mizukami All Rights Reserved.

bottom of page