「ブルーカーボン」という言葉がある。海藻や植物プランクトンが、大気中からCO2を取り入れることで、海洋生態系に固定する炭素のことだ。2009年に国連環境計画(UNEP)が命名した。ブルーカーボンは、人類の活動などによって排出されるCO2の約30%を吸収しているという情報もある。
日本が20030年までにCO2排出量を46%削減しようとすると、あらゆる手段を検討する必要があり、海に囲まれた日本では、ブルーカーボンによるCO2削減も積極的に推進すべきだ。
ブルーカーボンの吸収源としては、亜熱帯の陸と海の境界に発達するマングローブ、浅海域の塩性湿地、海草藻場、海藻藻場、干潟などがある。日本国内では、最もブルーカーボンを吸収しているのは、海藻藻場であり、50%以上を占めるとされる。続いて海草藻場、マングローブ、干潟の順となっている。
このブルーカーボンを国内で推進しているのは、国土交通省港湾局だ。「地球温暖化防止に貢献するブルーカーボンの役割に関する検討会」で議論を進め、「ジャパンブルーエコノミー技術研究組合(JBE)」を設置し、藻場・干潟等を対象としたブルーカーボン・オフセット制度の試行を行っている。藻場の保全活動により創出された CO2吸収量について、第三者機関の「Jブルークレジット審査認証委員会」による認証を経て、企業とのクレジット取引を行うものだ。まずは、横浜市金沢区で、アマモ、アカモクの藻場造成事業でのクレジット譲渡が行われている。
別の動きだが、日本国内では、鉄鋼生産の副産物であるスラグを使って「磯焼け」に悩む沿岸の生態系を再生させる実験が行われている。スラグと腐植土を入れた袋を浅瀬に埋めるだけでスラグ中の鉄イオンが海藻類の発育を促し、アワビやウニなどの漁獲量を回復させるという。スラグがコンブの育成に欠かせない鉄分を供給し、アワビやウニも戻ってくるうえ、コンブが発育する過程でCO2を吸収する。ブルーカーボン増進の取り組みは、CO2を吸収するだけでなく、生態系を再生し、さらに漁獲量を拡大させるという、一挙三両得の取り組みでもある。
国土交通省港湾局が、カーボン削減にどれだけ本気か分からないが、日本にとってブルーカーボンの取り組みは重要である。ブルーカーボンクレジットの幅広い普及などを通じたCO2排出削減を港湾局の新しいミッションとして、強くコミットしてもらいたいものだ。また、企業はCSVの機会として、自治体は地方創生の手段として、ブルーカーボン増進施策の推進を政府に働きかけるべきだ。
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