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新型コロナウイルスは、企業のCSRに対するテストである。

新型コロナウイルスに企業がどう対応するか、問われています。サステナビリティ業界でも、企業が新型コロナウイルスにどう対応すべきか、新型コロナウイルス後の世界がどうなるのかについて、様々な議論がなされています。今回は、CSV論文のマイケル・ポーター氏との共著者であるマーク・クラマー氏がHBRに寄稿した「新型コロナウイルスは企業のCSRに対するテストである”Coronavirus Is Putting Corporate Social Responsibility to the Test”」という論考の概要を紹介します。


政府は、国民への現金支給などを行おうとしているが、その規模は小さく時間がかかる。収入を失った人々は、政府からの支給を待つことができない。こうした危機にすぐに対応できるのは、企業だけである。

大企業がこうした危機にどう対応したかは、今後何十年も記憶されるだろう。38年前に、ジョンソン&ジョンソンが、自社製品のタイレノールに毒物が仕込まれたときに、短期的な損失を顧みず、すぐにすべての製品を回収したことは、今でも話題に上り、危機管理のベストプラクティスとして、当時生まれていなかった学生にビジネススクールで教え込まれている。

多くの大企業は、パーパスを掲げ、バリューを設定し、従業員やステークホルダーに配慮していると言っている。今が、それを実践していることを証明するときである。マネジメントが短期的利益を犠牲にしてもパーパスやバリューに基づく意思決定をしたとき、それが本当に信じられるものとなる。

米国のドラッグストアCVSは、健康をパーパスに掲げることを選択したとき、20億ドルの売り上げがあったたばこの販売を止めることを決めた。私のコンサルティング会社FSGでは、リーマンショックの際、雇用を守り、その代わり給料の高い者がより多く減額されるよう全社員の給料を削減した。10年後でも、社員はそのことを話している。

企業のリーダーは、投資家や銀行からの現金を保持し損失を減らせとの圧力に直面しているが、彼らは生活に困るわけではない。退職者も貯蓄が減るかも知れないが、資産はパニックとなって売らなければ、いずれ価値が回復する。企業もコストや損失を帳消しにすることができる。だからこそ、従業員、小規模サプライヤー、医療従事者、コミュニティを支援することが可能なのだ。

従業員に対しては、こうした危機に要請や期待を超えて雇用を守ることが、記憶に残り忠誠心を高め、生産性を向上し、長きにわたる評判を得ることになる。全額でなくでも賃金を払い続けることは、1つの選択肢だ。ウォルマート、マイクロソフト、アップル、リフトは、パートタイムにも賃金を払い続けることにコミットしている。このことは、企業の社会的責任というだけでなく、経済が通常に戻ったときの再雇用のコストを削減することになる。

従業員への貸付という選択肢もある。信用のある企業は低い利子でお金を借りることができるが、従業員は高い利子でないと借りることができない。企業は、自社の信用を活かして、従業員に低利または無利子でお金を貸すべきだ、また、従業員の医療費用、場合によっては葬儀費用を負担することも検討すべきだ。

小規模サプライヤーに対しては、通常より早期の支払いをし、彼らが生産を再開するときに必要な現金を提供すべきだ。

医療従事者に対して、世界では、基礎的な医療用具等が不足している場所があるが、大企業は世界中から資材を調達することができる。企業は、入手可能な地域から医療用具などを調達し、不足している地域に提供することができる。また、在庫から必要なものを提供することができる。

コミュニティに対して、大企業は、財団などを通じて、食料、診療その他緊急に必要とされるモノやサービスを提供するNPO等を支援することができる。

企業が現在のような危機に際して、どう大胆に動き、創造性を発揮してステークホルダーを支援するかは、明日の財産となるものだ。

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