サステナビリティ業界では、新型コロナウイルスのパンデミックを受けて、生物多様性の重要性が再認識されています。人間活動による生態系の破壊が野生生物と人との距離を縮め、それが感染症の原因であると考えられるからです。
DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー2020年8月号の「人類の進歩が招いた人類の危機」という論文によれば、1970年以降に発生した新規感染症の約半数は、野生生物由来とされ、その数は増加傾向にあるとのことです。
具体的には、HIVは、霊長類固有の感染症であるサル免疫不全ウイルスに感染したチンパンジーを人間が食べて感染したと考えられています。エボラ出血熱、SARSおよびMARSは、コウモリが保有していたウイルスが中間宿主を介して、人間に感染したと考えられています。新型コロナウイルスについては、コウモリ由来のコロナウイルスの遺伝子の一部にセンザンコウ由来のウイルスの遺伝子が組み合わさったウイルスが起源と推測されています。
こうした野生生物由来の感染症の原因となっているのが、生態系の破壊です。熱帯雨林をはじめとする生態系には、人間が触れたことがないウイルスが多数存在し、一部は野生生物を宿主としています。急速な生態系の破壊は、そうしたウイルスと人間あるいは家畜が接触する可能性を高めています。
「人類の進歩が招いた人類の危機」によれば、ウイルスは、古来、生態系の中で生物多様性の一員として進化を繰り返しており、ある種の生物集団が増えすぎて生態系のバランスを崩すようなことがあれば、その集団に寄生して感染症を起こし、集団密度を低下させ数の調整を図ってきたとのことです。すなわち、ウイルスは、地球上の生態系のバランスを維持するために存在するとのことです。
これは人類にとっては恐ろしいことで、増えすぎた人類は、ウイルスからすると絶好の獲物となっています。人類は、今回の新型コロナウイルスをきっかけとして、生物多様性保全の重要性を真剣に認識すべきです。新型コロナからのグリーンリカバリーにおいては、気候変動が特に注目されていますが、今回のウイルスの原因と考えられる生物多様性保全にもより注意を向ける必要があります。
今年10月に開催される予定だった生物多様性のCOP15は、延期になりましたが、COVID-19を受けてより重要性を増しています。世界が注目して真剣な議論を行うことを期待します。
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