社会課題解決の基本的主体は、政府、市民、企業の3つです。通常、社会課題というときは、市場経済の副作用として顕在化している課題、市場経済において解決できていない課題を言います。政府は、社会課題に対して、規制や政策的インセンティブを与えることで対応します。以前は、社会課題解決は政府が対応するのが基本でした。しかし、社会課題の深刻化や顕在化、情報化の影響等による社会課題への関心の高まりの中で、政府の社会課題解決能力の限界も明らかとなり、問題意識を持った市民がNGOなどを通じて社会課題解決に取り組むようになりました。近年は、市場経済のメインプレーヤーである企業が、社会的責任、あるいは、製品・技術やビジネスモデルのイノベーションを通じて、社会課題解決に取り組むことが、強く期待されるようになっています。特に、イノベーションへの期待は、大きくなっています。
富裕層の謝騎亜課題解決のアプローチにも、政府、市民、企業のそれぞれを通じた3つのパターンがあります。ビル・ゲイツ、マイケルブルームバーグ、ジェフ・ベゾスの各氏が、気候変動対策について、これら3つのアプローチを実践しています。
ビル・ゲイツ氏は、企業のイノベーションを促進するアプローチを取っています。核融合から溶融塩電池まで、様々なプロジェクトを支援しています。最近の社会課題解決のトレンドの沿ったアプローチと言えるでしょう。
ブルームバーグ氏は、政府に働きかけるアプローチを取っています。石炭火力発電所閉鎖のキャンペーンに1億7,000万ドル以上を拠出するなどして、政府に圧力をかけ、米国のCO2排出削減に一役買っています。
ジェフ・ベゾス氏は、市民による気候変動対応、NGO支援のアプローチを取っています。ベゾス氏は、100億ドルの「ベゾス・アース・ファンド」を設立し、第1弾として、複数の米国で最も規模が大きく伝統のある環境保護5団体を含む複数の環境保護団体に7億9,100万ドルを拠出しています。
これら3つのアプローチは、それぞれ必要ですが、富裕層もそれぞれ強みがあるので、それを生かすやり方が期待されます。そういう意味では、テクノロジー企業の創業者であるゲイツ氏やベゾス氏には、企業のイノベーション支援のほうが、ふさわしいように思います。一方で、前ニューヨーク市長のブルームバーグ氏には、政府に対するアプローチがフィットしていると思います。
ベゾス氏の気候変動の貢献については、米国の富裕層が良く行う節税対策としての寄付の延長で革新的でないという意見があるほか、環境保護団体に莫大な寄付をすることで、環境保護団体がアマゾンを批判しにくくなっているのではないかとの意見もあります。
加えて、ベゾス氏は、お金は出しているが、コミットメントが弱いとも指摘されています。ゲイツ氏は、気候変動対策を促す執筆や講演を積極的に実施しており、来年には、気候変動関連の著書を出版予定です。ブルームバーグ氏も、毎年、国連の気候変動関連会議のために飛び回り講演するなど、聞く変動問題に心血を注いでいます。それに比べると、ベゾス氏は情報発信も限定的で、熱意が感じられないとされています。
富裕層が社会課題解決に取り組む場合、自らの強みを生かし、強くコミットすることが求められます。単にお金を出すだけでは、賞賛もされず、社会課題解決への貢献も限られるでしょう。
(参考)
「ベゾス流、気候変動との向き合い方」日経ビジネス2020.12.07
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