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大阪ブルー・オーシャン・ビジョンが描くべき将来像とは?

G20が閉幕しました。首脳宣言の目玉の一つが、プラスチックごみの流出による海洋汚染を2050年までにゼロにする「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」です。海洋プラスチックは、最近急速に注目され、各国・地域が対応を進めており、各国間で合意しやすい状況にありました。そこで、日本政府としても、これを目玉にしようと働きたけた結果です。


現在問題となっている合成樹脂プラスチックは、1907年に発明されたベークライトが最初とされ、その後、第二次世界大戦中に鉄・アルミなどの代替製品としてプラスチックメーカーが発展し、戦後に、安価で機能が高く使い捨て出来る便利な素材として、日用品などに幅広く活用されるようになりました。そして、1950年に200万トンだった世界のプラスチック生産量は、2015年には3億8,000万トンになっています。また、耐久性に優れ分解しにくいプラスチックは、特に海洋では、数百年から数千年も浮遊し続けると言われます。


人類の発展の過程で生まれた便利な素材であるプラスチックは、その高い機能がゆえに、幅広く使われて生産量が急拡大したために問題となっています。安さ便利さという光の部分にだけフォーカスし、廃棄・処理といった陰の部分への対応を疎かにしてきたためでもあります。なお、プラスチック廃棄に限りませんが、陰の部分への対応は基本的に政府に丸投げする一方で、政府批判など、政府の劣化を助長する社会の在り方は、様々な問題の原因の一つとなっており、そもそも経済・社会の高度化の副作用を政府だけで対応することができない時代になっているという構造的な変化についても認識する必要があります。


それでも、日本では、廃棄物処理インフラが整備されており、プラスチックも80%以上がリサイクルされています。特に、焼却した上で焼却時の熱を有効利用する「サーマルリサイクル」の取り組みが進んでおり、プラスチックの60%近くがサーマルリサイクルされています。その他、プラスチックにリサイクルされる「マテリアルリサイクル」が20数%、化学原料にリサイクルされる「ケミカルリサイクル」が数%です。日本は、サーマルリサイクル大国と言えるでしょう。日本の産業界もサーマルリサイクルしていることをアピールしています。サーマルリサイクルは、海洋プラスチック問題の対策にはなっているかも知れないが、気候変動促進しているとの批判に対しても、サーマルリサイクルのLCAでの温室効果削減効果は、優れるといった試算を発表したりしています。


しかし、世界的にはサーマルリサイクルは、プラスチック問題に対する本質的な解決策ではないという考えが根強く、そもそも世界的には、「サーマルリサイクル」ではなく「熱回収」という言葉が使われており、サーマルリサイクルはリサイクルには含まれていません。世界が向かっているのは、マテリアルリサイクルなどを軸とする「サーキュラーエコノミー」です。


海洋プラスチック問題だけの解決策としては、焼却・熱回収も有効ですが、気候変動を含む環境問題全体を見据え、新しい経済の仕組みを作っていこうという大きなトレンドの中で、「サーマルリサイクルしているから問題ない」という思考は、リスクが大きいと思います。個々の問題や批判に対して個別の対策を考え主張するだけでなく、長期的視点であるべきシステムのビジョンを描くことも併せて考えていかないと、日本が脱プラスチック・脱炭素の世界で影響力を持つことはできないでしょう。「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」は、単なる長期目標を超えて、そうした社会のあるべき姿を描けるでしょうか?

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