ダイバーシティ&インクルージョンは、一般的には、組織内の多様性を尊重し、受容し、生かすことです。組織の多様性は、異なる知識や考えを組み合わせことでイノベーションを生み出すとともに、意思決定に多面的な視点をもたらすことで、組織の持続可能性を高めると考えられています。同質な組織は、あうんの呼吸で意思決定ができ効率的ではあるものの、変化を生み出すこと、変化に対応することは苦手です。やることが決まっている場合は、同質的な組織は強いですが、何をするか新しいことを考えるのは苦手です。VUCAの時代に、組織のD&Iが求められるのは必然と言えるでしょう。
一方で、社会のD&Iも重要です。社会におけるD&Iは、社会におけるイノベーションの創出や持続可能性を高めることにつながります。例えば、多様性が米国のイノベーション創出力の源泉になっていることは、論をまたないでしょう。また、社会のD&Iは、多面的な視点を通じて社会の持続可能性を高めます。
日本社会は、多様性が不足していると言われます。世界経済フォーラムのジェンダー・ギャップ指数2018では、149か国中110位で、先進国では最低レベルです。しかし、個人的にD&Iと持続可能性の観点で最大の課題は、NPO/NGOが育っていないことだと考えます。
資本主義の基本思想は、「富が増えることが、人々を幸せにする」ということです。そのため、企業活動を通じて富を増やすことが、資本主義社会の基本となっています。企業が富を増やす役割を担い、政府が、その富を再配分し、企業を中心とする経済活動の副作用として生じる環境・社会問題を解決するというのが、これまでの社会における基本的役割分担でした。
しかし、現在のグローバル化、複雑化した社会では、すべての問題を政府が解決することができなくなっています。(政府が企業の影響力を大きく受けるようになっているという問題もあります。)そのため、企業の社会的責任が求められているわけですが、富を生み出すことが基本的役割とされている以上、企業にできることには限界があります。そこで、重要な役割を果たすのが、NPO/NGOです。
各国政府レベルでは対応が難しいグローバルな問題に警鐘を鳴らす国際NGO、縦割りの政府では対応が難しい課題、企業の影響を受ける政府が対応できていない課題、政府が気づかない課題解決に取り組むNPOなどの役割が重要となっています。今の時代、こうしたNPO/NGOが十分や役割を果たさなければ、社会の持続可能性は確保できません。
企業からすると、富を増やすという基本的役割を果たそうとしている中で、様々な社会・環境問題について指摘するNPO/NGOはやっかいな相手で、できれば付き合いたくないという思いはあるかも知れません。政府のほうも、NPO/NGOからいろいろ言われたくない、予算や権限につながらない仕事は増やしたくないという思いはあるかも知れません。
しかし、現代社会において、NPO/NGOが育っていないというのは、社会の持続可能性の観点から、大きな問題です。企業は、積極的にNPO/NGOとエンゲージメントすべきですし、それが社会課題への感度を高め企業自身の持続可能性を高めるでしょう。政府も積極的にNPO/NGOを育成する政策をとるべきです。高齢化社会において、NPO/NGO活動が長期的な人々のつながり、活躍の場を提供するという側面もあります。
社会のD&Iを高めることは、社会の持続可能性を高めますが、NPO/NGOを育てること、受け入れることは、その中でも最優先課題だと思います。
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