top of page
検索
  • takehikomizukami

企業は「貧困」にどう貢献するか?「SDGs1%イニシアチブ」のすすめ

日本の企業セクターでは、かなりSDGsへの関心が高まっています。国連や日本政府、経団連などをはじめ、SDGsは事業機会になるとプロモーションしていることもあるでしょう。確かに、SDGsの中でも、「エネルギー」「健康・福祉」「都市」「食料・農業」に関連するものは、新しい市場の創造、市場の成長が期待されるところです。また、「ジェンダー平等」など、人材確保・活躍を通じて企業の競争力に関わると考えられるものもあります。一方で、「貧困」「不平等」「生態系保全」「平和」関連など、ビジネスそのもので取り組むのがやや難しいSDGsもあります。


企業がこうしやビジネスで取り組むのがやや難しいSDGsに貢献しようする場合、社会貢献活動を通じた貢献も重要となります。私もCSVを推進している立場上、寄付やボランティアを積極的に推奨してはいまぜんが、こうした取り組みの意義も理解しています。


企業の社会貢献活動に関するイニシアチブとして有名なのは、「経団連1%クラブ」です。経常利益の1%程度を社会貢献活動に拠出することを目指すイニシアチブとして、1990年に任意団体として設立されましたが、今年4月からは、経団連企業行動・SDGs委員会の下部組織として、企業による社会貢献活動の進展のために活動しています。経団連会員企業に対する調査によれば。経常利益に対する社会貢献活動支出は、1%には達していませんが、0.9%程度となっています。トヨタのように経常利益が2兆円を超える企業であれば、200億円を超える社会貢献活動費となりますので、結構インパクトはあります。


企業の社会貢献活動は、お金の拠出だけではありません。エーザイは、「業務時間の1%を患者様とともに過ごす」ヒューマン・ヘルスケア(hhc)活動を実践しています。企業理念で謳う「患者様満足の増大」を実践するための活動ですが、この活動は患者を支援するとともに、社員の意識を変え、さらには患者のニーズを捉えたイノベーションにもつながっています。


社会貢献の方法としては、製品やサービスの提供もあります。セールスフォースは、「1-1-1モデル」という仕組みで、株式の1%を寄付や資金援助に回し、就業時間の1%をボランティア活動に充て、製品の1%を非営利組織に無償で提供しています。この取り組みは、社会貢献を重視するセールスフォースの企業文化を形作る重要な活動であり、目線を広げることでイノベーションにもつながっています。


SDGsに戻ると、普段ビジネスとの関係で考えることの少ない「貧困」などの問題に社会貢献活動で取り組みことは、社会の在り方について考える機会となり、ビジネスパーソンとしての視座を一段高めることにつながります。人材育成やイノベーションのポテンシャルを高めるという観点で、企業経営にとっても意味があるでしょう。


企業のSDGsへの取り組みについて、ビジネス機会やリスクに直結する、SDGsがなくても取り組むべき社会課題だけではなく、ビジネスとの関わりが考えにくいSDGsに1%程度をめどに何らかの貢献をする「SDGs1%イニシアチブ」を推進してはどうでしょうか。

閲覧数:134回0件のコメント

最新記事

すべて表示

先日実施した拙著「サステナビリティ-SDGs以後の最重要戦略」の出版記念シンポジウムのパネルディスカッションが記事になりました。 ブリヂストン稲継様、ネスレ日本嘉納様、GAIA Vision出本様、WWFジャパン東梅様にご登壇頂き、サステナビリティを進めていくために必要な視点、コラボレーションの可能性などについて議論しました。 議論の中で改めて重要だと思ったのが、「(短期と長期の)両利きの視点」で

今月のDIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー(DHBR)に、「(DEIで見落としがちな視点)障害者の雇用は競争優位の源泉となる」という論文が載っています。 拙著「サステナビリティ -SDGs以後の最重要生存戦略」で、SDGs目標8に貢献する取り組みとして「未活躍人的資源を生かす」を挙げ、SAPが自閉症の人材を積極的に採用し、細微に注意を集中するという特性をソフトウェアの修正点の発見などに生か

ESGファンドの閉鎖が相次ぐなど、ESGブームは終わったとの見方がある。ESGへの関心の高まりの流れに乗って、多くのESGファンドが立ち上げられたが、余り中身のないものが淘汰されるのであれば、良い動きとも言える。 ただし、後に本物が残ることが大事だ。ESGファンドが持つ視点は、大きく2つあると思う。 1つは、人的資本、知的資本など、いわゆる非財務資本を有効に強化・活用しているかどうかだ。こちらは、

bottom of page