top of page

企業は、生物多様性に如何に取り組むべきか。生物多様性のCSVとは。

  • takehikomizukami
  • 2021年7月31日
  • 読了時間: 3分

今年10月には、中国・昆明で、COP15(生物多様性条約第15回締約国会議)開催され、2010年に愛知で開催されたCOP10で合意された愛知目標(2020年までの生物多様性戦略計画の20の戦略目標)の次の世界目標である「ポスト2020生物多様性枠組」が決定される予定です。


その他にも、TCFDの生物多様性版である「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)」が今年正式発足、SBTの生物多様性版であるSBTs for Nature(SBTN)の初期ガイダンスが昨年発表されるなど、最近、生物多様性に関する動きが活発化しています。


生物多様性は、気候変動の次に来る大きな波で、企業活動に大きな影響を及ぼすと言われています。しかし、気温上昇や気候災害が実感として理解できるようになっている気候変動とは異なり、またどんなリスクがあるのかピンと来ないという人も多いでしょう。取り組みが加速するまでには、少し時間がかかるかも知れません。だからこそ、先んじで取り組みを進めることが、将来の競争力につながります。


生物多様性の人間活動、ビジネスへの影響は、「生態系サービス」として整理されています。生態系サービスは、供給サービス(食料や医薬・工業原材料の提供等)、調整サービス(気候の調整、廃棄物の分解等)、文化的サービス(精神的・文化的価値、観光資源の提供等)、基盤サービス(栄養循環、酸素の供給、水・空気の浄化等)、保全サービス(災害予防等)その経済的価値は、約33兆ドルを試算されています。


これらの生態系サービスは、生物多様性によりもたらされており、生物多様性が毀損すると、生態系サービスの価値も失われます。企業としては、自社にとって重要な生態系サービスを維持・強化することが必要です。


例えば、米LCCのジェットブルー航空は、米国務省魚類野生生物局、野生生物保護を啓発・促進するNPOや企業などによる組織U.S. Wildlife Trafficking Allianceとともに、旅行者にカリブ海の生態系保護の啓発に取り組んでいます。カリブの生態系を保護するために旅行者が出来ることを啓発するビデオを作成し、すべてのフライトで流しています。


ビデオでは、カリブの観光地で生態系保護に取り組む人々を紹介し、珊瑚やウミガメを保護するために、珊瑚やウミガメの甲羅で出来た製品を買わないこと、ウミガメ料理を出すホテルに泊まらないことなどを啓発しています。旅行者が余り意識せずに生態系破壊に加担し、カリブに人々を惹きつけている自然の魅力が失われつつある現状に気付いてもらい、カリブの生態系を保護しようとしています。ジェットブルーは、こうした取り組みを通じて、「スマートな旅行(Travel Smart)」「責任ある旅行(Responsible Tourism)」のカルチャーを創造しようとしています。


ジェットブルー航空のフライトの3分の1はカリブ・南米向けで、カリブの自然の魅力を維持することは、ジェットブルー航空のビジネスにとっても重要です。そのため、ジェットブルー航空は、カリブの生態系保護活動に積極的に取り組んでおり、海洋保護財団と経営コンサルティング会社A.T.カーニーとともに、自社事業の財務の健全性が、生態系の健全性に依存しているとのレポートも発行しています。レポートでは、カリブ海の自然を保全することが、カリブ海に多数の路線を持ち、年間180万人の旅行者を運んでいるジェットブルー航空の収益に貢献することを、定量的に算出しています。


このように、自社にとって重要な生態系サービスは何か、その生態系サービスの価値を維持・強化するためには、どのように生態系・生物多様性を保全する必要があるかを考え、取り組みを進めることが重要です。COP15を前に、自社にとって重要な生態系サービス、保全すべき生物多様性について、考えてみては、如何でしょうか。

 
 
 

最新記事

すべて表示
2026年のサステナビリティ戦略。サステナビリティが企業価値につながる事例が増える一方で逆風も吹く時代、企業は全力疾走すべき時、減速すべき時、小さな一歩を踏み出すべき時を見極めて柔軟に対応することも必要

サステナビリティが企業価値につながる事例は増えているが、一方で反ESGの動きもある。こうした時代において、企業はどのようにサステナビリティ戦略を舵取りすべきか。TRELLISの記事を紹介する。 2025年が明らかにし、2026年がすでにサステナビリティに関して再確認していることは、「緊張とトレードオフ」が常にサステナビリティ経営の核心であり、そして近い将来もそうあり続けるだろうことだ。 サステナビ

 
 
 
サーキュラーエコノミーの不都合な真実

先日の日経ビジネスに「循環型経済の『不都合な真実』」という記事が掲載されている。同記事によれば、サーキュラーエコノミーは、以下のような課題を抱えている。 リサイクルは環境負荷を増やすことがある。 製品や資源を回収して再利用するには、エネルギーと新しい資源が必要で、リサイクルするより新しく作ったほうが環境負荷の低い場合もある。コンクリートについて、EUは解体廃棄物のリサイクルによってセメント需要を5

 
 
 
マイクロソフトがデータセンターの負の影響に対応し、地域の電力料金を上昇させない、水使用を最小限とし使用する以上の水を補充するなどのコミットメントを発表。負の影響がもたらすリスクへの迅速な対応はサステナビリティ経営の参考となる。

AIが急速に普及する中、そのインフラとしてのデータセンターの建設も急速に進んでいる。しかし急速な変化は必ず負の影響ももたらす。データセンター建設に関しては、日本国内でも排熱、排気、排水、騒音、日照権などへの懸念から一部地域で反対運動が起こり、計画が頓挫している。 米国では、2025年に25件のデータセンタープロジェクトがキャンセルされており、2024年の6件から大きく増加している。反対の最も大きな

 
 
 

コメント


Copyright(c) 2019 Takehiko Mizukami All Rights Reserved.

bottom of page