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企業は、気候変動の次の波、生物多様性にどう対応すべきか?

本年9月頃に、生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)が中国昆明で開催され、2030年に向けた新たな国際目標が設定される予定です。また、本年3月には、TCFDの生物多様性版と言える自然関連財務情報開示タスクフォース(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures:TNFD)がベータ版のフレームワークを提示し、検討が本格化しています。SBT for Natureのガイダンスの本年中に公開される予定で、気候変動の次は、生物多様性/ネイチャーの波が来る可能性があります。


企業の生物多様性への対応は、自社バリューチェーンの生物多様性への影響および依存の評価から始まります。「影響」は、自社バリューチェーンが土地利用、汚染、乱獲、外来種を通じて生物多様性にどのような影響を及ぼしているかを把握するものです。「依存」は、食料・医薬品などの原材料供給、気候調節、水量調整、水浄化、災害緩和、景観といった生態系が提供するサービスにどれだけ依存しているかを把握するものです。そして、影響の大きいものはそれを緩和すべく、依存の大きいものはそれを維持すべく対策を取ることになります。


「影響」については、農業、林業、都市化による土地利用の影響が最も大きいとされています。土地利用について、生物多様性に影響を与えている代表的な作物であるパーム油を例にとって考えてみましょう。パーム油は、食用油、マーガリン、石鹸などの原料として幅広く使用される世界で最も生産されている植物油ですが、そのプランテーションが、インドネシア、マレーシアなどの熱帯雨林を切り拓いて原生林を破壊しているとして、NGOなどの批判の的となっています。


この問題に対して、ユニリーバは、WWFなどと協働してパーム油が持続可能な形で生産され、流通されていることを認証するRSPOの仕組みを創っています。RSPOには、現在では数千の組織が加盟し、認証パーム油の需要が高まっていますが、ユニリーバは、認証制度を創ったルールメーカーとして調達面での優位性を確保しているといいます。


パーム油に関しては、認証の信頼性を高めるためのブロックチェーン技術によるサプライチェーンの透明性確保、人工衛星を用いたパーム油農園における森林破壊の監視のほか、発酵プロセスなどにより化学的に人工パーム油を作る技術開発も行われています。RSPOなどのルールメイクを含むこれらの取り組みは、パーム油以外の土地利用の影響を与える作物等にも応用できるでしょう。


「依存」については、飲料メーカーが水資源を育む森林生態系に依存している例が分かりやすいでしょう。サントリーは、「天然水」をビール、ウィスキー、飲料水の商品差別化の源泉とするサントリーにとっては、水資源を保全することが極めて重要です。そして天然の水は、山間地に降り注いだ雨が、長年かけて豊かな森と土壌に育まれて作られます。それを理解しているサントリーは、自社工場の水源地を「天然水の森」として、豊かな森や土壌を保全する活動を進めています。


別の例としては、米LCCのジェットブルー航空が、NPOなどとともに、カリブ海の生態系保全や旅行者にカリブ海の生態系保護を啓発する取り組みを進めています。ジェットブルー航空のフライトの3分の1はカリブ・南米向けで、カリブの自然の魅力を維持することは、ジェットブルー航空のビジネスにとっても重要です。そのため、ジェットブルー航空は、カリブの生態系保護活動に積極的に取り組んでおり、海洋保護財団と経営コンサルティング会社A.T.カーニーとともに、自社事業の財務の健全性が、生態系の健全性に依存しているとのレポートも発行しています。レポートでは、カリブ海の自然を保全することが、カリブ海に多数の路線を持ち、年間180万人の旅行者を運んでいるジェットブルー航空の収益に貢献することを、定量的に算出しています。


今後の生物多様性/ネイチャーの波に備え、自社バリューチェーンが生物多様性/ネイチャーにどう影響を及ぼし、どう依存しているか、そしてそれが自社のビジネスにとってどのような意味を持つか、早めに検討を進めるべきでしょう。

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