新型コロナウィルスに対し、企業はリスク対策の観点からの取組みを進めていますが、まだ能動的にこの問題の解決に貢献しようという動きは少ないようです。しかし、企業はこうした大きな社会的問題に対し、どう貢献できるかという視点を常に持つ必要があります。
CSVやコレクティブインパクトのコンサルティングを行っているFSGが、パーパスを持つ企業が新型コロナウィルスの感染拡大に対し何ができるか、4つの方法を提案しています。
1.自社の強み・リソースを活かす
企業が新型コロナウィルス問題に対する最も価値ある貢献は、自社ならではの強み・能力を活かして、人々やコミュニティの差し迫ったニーズに対応することだ。政府やNGOは、企業の技術的な専門性や生産能力に期待するが、企業は以下のように対応できる。
・製品の生産と寄付:3Mの個人用保護具は、保険医療従事者等の需要が大きい。3Mは、コロナウィルスの感染拡大を受けてすぐに、パートナーである国際NGOと協働で、マスクや手指消毒剤の在庫を確保し、寄付に回している。また3Mは、増加する需要に対応して生産を拡大し、政府や消費者に対して呼吸保護に対する専門知識を提供している。(着用者を外部のウィルスから保護するマスクと、着用者のウィルスを外に出さないよう遮断するマスクの違い等)
・患者に対するサービス内容の一部変更:新型コロナの検査を受ける患者の財務負担を軽減するため、一部の健康保険会社は、被保険者の新型コロナ感染検査の費用をすべて負担している。
・R&Dとイノベーション:バイオテクノロジーと製薬企業は、新型ウィルス感染の検査、治療、防護のための取組みを加速している。米製薬企業アボットは、自社の分子診断プラットフォームを用いて、検査機関や病院向け、臨床現場即時検査向けのそれぞれについて、新型コロナウィルス検査の開発を積極的に実施している。
・コミュニケーションとメディア:主要メディア企業は、人々がこの公衆衛生の危機をどう理解し、行動するかに大きな影響力を持っている。四六時中のメディアの狂乱は、視聴者を増やし利益を増大できるが、不適切な行動を誘発する可能性もある。パーパスのもとで行動するメディアは、心配を煽るような見出しを避け、科学に基づく、公正な情報やガイダンスの提供を心掛けるべき。
2.寛容であることが重要
自然災害のとき同様、現金の寄付は、コミュニティがこのパンデミックと闘うことをサポートするのに重要だ。企業の社会貢献活動のリーダーは、コミュニティのニーズを聞く、NPOが重要な活動を維持することを支援する、歴史的に弱い立場にあるコミュニティの脆弱性を理解する、地域政府やコミュニティの同意を得るなどの専門家のアドバイスを考慮すべきだ。
企業はすでに行動しており、企業や財団による新型コロナウィルスに対応する社会貢献費用は、世界で10億ドルを超えている。マスターカードは、ビル&メリンダゲイツ財団等と共同での新型コロナウィルスに対する新たな診断、治療法の開発、普及を目指すテクノロジーを支援する1.25億ドルのイニシアチブに2500万ドル拠出している。
3.思いやりとコスト
企業の緊急時における従業員への対応は、企業のパーパスの本当のテストとなる。従業員がオフィスの閉鎖、隔離、学校閉鎖等で仕事に来ることができないとき、企業はどう対応するか?
現在の感染拡大の状況において、多くの企業は、現在の休暇制度が最もサポートを必要にしている従業員にとって使い勝手が良くないなどを学んでいるだろう。企業は、従業員の病欠や個人時間に対する配慮のある適応性のあるアプローチとボトムラインのバランスを取る必要がある。
一部企業は、最も影響を受ける従業員を積極的にサポートしている。マイクロソフトは、ピュージェット湾地域の従業員から自宅勤務の希望があったが、それはシャトルドライバー、カフェのワーカー、テクニカルサポートなどの常駐スタッフの仕事の減少につながった。マイクロソフトは、そうした従業員の賃金を減らすのではなく、4,500人の時給制の従業員に、仕事が減っても通常どおりの賃金を支払っている。
ウォルマートは、新型コロナウィルスと診断された、または隔離された時給制の従業員に対し、2週間までの賃金を提供すると発表した。これらの従業員は、有給休暇を消化する必要はなく、追加26週間の賃金振替の資格がある。同様にアップルは、新型コロナウィルスに似た症状の風邪やインフルエンザの症状のある時給制の従業員に、制限のない有給休暇を提供している。
リフトは、契約社員であるドライバーに対し、新型コロナウィルスと診断されるか、隔離された場合、財務的に支援することをコミットしている。リフトは、契約上の義務を超えて、ドライバーに財務的支援、健康に対する支援を行っている。
4.システムの問題は、システムの解決策を必要とする
我々がこの急性の危機をやり過ごし、一定の通常に戻ったとき、企業のパーパスは、ヘルスケアや公衆衛生のインフラやシステムをより良くしていくかについて、企業の長期的なコミットメントをどうガイドするか?
グローバルレベルでは、企業は、Global Health Security Agenda Private Sector Roundtableなどの既存のマルチステークホルダーの仕組みでエンゲージすることができる。こうした仕組みは、医療システムが医療機器に対応するための強化に産業横断的に取り組むとともに、新興疾患に対する医療対策への投資を支援するためにある。
特に米国では、新型コロナウィルスを抑え、検査医療体制を強化するための緊急対応は、既存のヘルスケアシステムに対する本等の課題を顕在化した。3,000万人近い保険に加入していない米国人は、診断または治療されていない慢性疾患を持つ恐れがある。そうした人々が新型コロナウィルスに感染した場合は、リスクが高くなる。そして、医療費が拡大して、財務負担に耐えられなくなる恐れがある。
民間セクターは、ヘルスケアと公衆衛生のシステムを強化することに大きな影響を及ぼすことができる。アクセスでき費用負担可能な健康保険提供の支援に加え、企業は、ビジネスが安全で健康的なコミュニティで行われるために必要な公衆衛生システムの構築を先導できる。公衆衛生リーダーは、企業のサポートを活用し、危機が訪れる前に必要なリソースが確保できているかを確認できる。また、安全で安価な住居、教育、健康的で安価な食品、持続的な雇用といった要因が個人およびコミュニティレベルの健康やウェルビーイングに貢献することを理解している。
企業の役割は、将来の大規模なシステムの破綻と不公平を避けるため、意味のある変化を起こすために影響を及ぼすことである。
上記以外にも、化粧品のラッシュが、店舗で無料の手洗いサービスを提供する、グーグルやマイクロソフトが遠隔ミーティングのためのサービスを無料で提供するなどの動きもあります。
新型コロナウィルスの感染拡大の影響はどこまで広がるのか、いつまで続くのか、見通せない中で、リスク対策も重要ですが、自社がこの問題に対して何ができるか、能動的に考えて、実践することも重要です。
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