今年も米フォーチュン誌が「世界を変える企業リスト(Change the World List)」を発表しました。社会インパクト、財務的成果、イノベーション、戦略との統合の視点でCSV企業を選定・評価し、ビジネスの中心的戦略を通じて、社会にポジティブなインパクトを及ぼしている企業をリストアップしています。前回までに、1-20位を紹介しましたが、今回は、21-30位です。
21位は、 米国化学メーカーのイーストマン・ケミカル。2019年にイーストマンは、カーボン再生技術(carbon renewal technology)およびポリエステル再生技術と呼んでいるプロセスのプラントを、プラスチック廃棄物を受け入れられるよう改修し始めました。そのプロセスで、原料は、分子レベルに分解され、理論的には永続的にリサイクルできる製品に活用されます。そして、廃棄ポリエステルは、原材料に戻ります。H&Mなどを含む25のブランドおよび企業が、パッケージ、カーペット繊維などのプラスチック廃棄物の由来イーストマンの材料から作られる製品を販売しています。イーストマンは、2030年までに、5億ポンドのプラスチックをリサイクルすることを目指しています。
22位は、リーバイス。毎年世界で約1,500億着の衣類が生産されますが、2-3年で60%以上が廃棄されます。短サイクルのファストファッションへの欲求は、環境に対する深刻な結果をもたらします。リーバイスは、4月に始めた「良いものを長く着よう(Buy Better, Wear Longer)」キャンペーンで、これを変えようとしています。リーバイスは、消費者に対し、衣類の購入について良く考え、ジーンズや他の衣類を長く着て、買い替え頻度を少なくし、長期的に廃棄物を減らすよう促しています。(このキャンペーンは、一方で、リーバイスに、消費者がプレミアム価格を支払う可能性のある自社商品の耐久性や仕立てサービスを宣伝する機会を提供しています。)環境配慮に加えて、リーバイスは、従業員に8週間の有給家族休暇を提供し、パートタイム従業員向け有給病気休暇拡大することで、従業員を支援・維持しています。
23位は、世界最大の求人情報プラットフォームの一つである米国インディード・ドットコム。大退職時代(the Great Resignation)が到来する中、就職活動におけるバイアスをなくすことに注力しています。3月には、バーチャル就職プラットフォームを立ち上げ、260万人の面接スケジュールをサポートしています。インディードのスクリーニング・テクノロジーは、リクルーターの基準に合うすべての候補者に、リモート面接の機会を提供し、名前、人種、教育などによるバイアスをなくすようサポートしています。また、インディードは、仕事を探している人のために、サーベイに基づくワーク・ハピネス・スコアで、企業を働き方の柔軟性、給与、インクルージョンの観点から評価しています。
24位は、南アフリカのエンターテイメント企業マルチチョイス・グループ。マルチチョイスは、アフリカの有料TV放送のリーディング企業で、衛星サービスのDStv、音楽・アニメのGOtvなどを提供し、50カ国、2,090万の家庭にサービスを提供しています。マルチチョイスは、そのポジションを維持するため、地産地消に向けてアフリカ人によるプログラミング製品に大きく投資しています。マルチチョイスのイノベーションファンドは、14か国で、スモールビジネスに1,780万ドルを提供し、タレントファクトリーで映画監督、作家などの200人以上のストーリーテラーを育成しています。昨年度は、前年度比19%増のローカルコンテンツを制作し、前年度比4%増の32.8億どるの収益を上げています。
25位は、米国タイルカーペット大手のインターフェイス。カーペットは、米国の床材市場の60%を絞めており、リサイクルされていないプラスチック、有毒物質やカーボンを大量に排出する添加剤を用いて作られています。インターフェイスは、この例外として有名です。インターフェイスは、2年前にカーボンニュートラルを実現し、2020年には、カーボンを大気から取り除いて蓄えるカーボンネガティブのタイルの販売を開始しました。インターフェイスは、その他のカーペットからの排出を、アフリカ、南米におけるカーボン削減の取り組みへの投資でバランスさせています。
26位は、中国のECプラットフォームbのピンドゥオドゥオの(Pinduoduo)。今年4-6月の4半期は、36億ドルの売上、3.74億ドルの利益となっていますが、8月に、農業関連の社会貢献のため、15億ドルのファンドを設立し、農家へのテクノロジーとビジネスのトレーニング、ロジスティックインフラの整備、アグリテックのR&Dを提供すると発表しました。ピンドゥオドゥオは、この社会貢献の取り組みが、サプライチェーンと農家との関係を向上し、1,200万人の農家が利用する自社サービスの利益につながることを期待しています。
27位は、米国穀物メジャーのアーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)。ADMは、1950年代から、植物由来の代替肉開発を進めてきています。現在、時価総額640億ドルの食品原材料企業はグローバルで食品ブランドを提供し、恐らく世界最大の植物由来たんぱく質の生産者となっています。ADMの10のジョイントベンチャーと投資は、動物細胞からの食肉培養、発酵によるたんぱく質生産から世界最大の(ハエを飼料にする)昆虫たんぱく質の生産施設の構築まで、幅広いカテゴリーに対応しています。こうした取り組みは、ADMをコモディティの穀物を加工する巨大アグリ企業を超える存在するためのカギを握っています。ADMは、100億ドルの植物由来たんぱく質業界が、消費者が食品の環境負荷により関心を持つようになり、これからの10年で3倍になると予測しています。
28位は、ネスレ。ネスレは、インポッシブルフーズ、ビヨンドミートなどの成長とともに、急速に普及する植物肉市場に遅れて参入しました。しかし、食品・飲料の巨大企業は、現在では、幅広いポートフォリオにおいて、消費者と地球の健康を向上する可能性を持つ、ビーガン・キットカット、エンドウ豆由来のツナやミルクの代替品、昆虫やソラマメから作られるペットフードなど、積極的に製品を発表し、遅れを取り戻しています。ネスレでは、R&D従業員の約10%が植物由来商品の開発に携わっており、年間売上は10億円に近付いています。ネスレの巨大な規模と流通ネットワークは、食肉と乳製品の代替品の2桁成長を企業にもたらすだけでなく、世界中でこのカテゴリーがメインストリームになることを後押ししています。
29位は、ノルウェーの肥料大手ヤラ・インターナショナル。2020年6月、国連が年末までに世界で2.65億人が飢餓の危機に瀕すると警告する中、ヤラはその対応に乗り出しました。Action Africaと呼ばれる計画で、すぐにアフリカに、トウモロコシの生産を3倍にして年間100万人に食料を提供できる4万トンの肥料を出荷しました。この肥料の寄付は、合計で25万人の小規模農家を支援しています。この支援は、単なるフィランソロピーではなく、顧客ベースを成長させるための取り組みです。Action Africaでは、作物の生育期に農家に無料のアドバイスを提供するデジタルプラットフォームも提供しています。2020年7月にスタートしたこのサービスには、200万人の農家が参加し、ヤラがアフリカの農村地域のコミュニティから収益を上げることにつながっています。
30位はShopify。Eコマースの環境負荷が厳しく問われる時代にあって、Shopifyは、小売業者等の顧客のカーボンフットプリント削減を支援しています。Shopifyは、自社のプラットフォームだけでなく、GoogleやFacebookでの販売にも使えるShop Payの決済サービスについて、自動的に注文ごとに発生するカーボンをオフセットするプログラムにできるよう設計しています。カーボンオフセットは、多くは、セネガルで2022年までに460万のマングローブを植林するプログラムで実施されます。このマングローブの植林は、Shop Payの決済に関連するすべての購買に関わるカーボン排出をオフセットするのに十分なものです。
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