マルチセクターリーダーは、企業、政府、NGOなど、多様なセクターの垣根を超えて活躍するリーダー人材です。サステナビリティの領域では、企業、政府、NGOなどによるサステナビリティ課題解決のイニシアチブが進められていますが、そうした取組みをけん引するには、複数のセクターのことを理解するマルチセクターリーダーがふさわしいと思います。
グローバル企業では、マルチセクターリーダーをサステナビリティの責任者として採用するケースも多く、実績もあげています。以前、コカ・コーラがインドで大量の水を使用しているとして政府、NGOの反発に遭い、清涼飲料水の製造を禁止されたとき、コカ・コーラは、国務省やUSAIDなど公共での経験が豊富なジェフ・シーブライト氏を外部から招聘して責任者に据えて、水資源の持続可能な利用に向けた戦略を構築しました。シーブライトしは、政府の環境関連部局でよく使われる地理情報システムを利用し、世界のコカ・コーラの工場の39%が水不足な深刻な地域に立地していることを明らかにし、鉱物・資源会社のリオティントに依頼し、コカ・コーラの20の事業部を対象とした水資源に関わるリスク分析を実施しました。そして、USAIDやWWFなどと水資源保全に向けた協働プロジェクトを推進しました。シーブライト氏は、その後、ユニリーバのCSO(Chief Sustainability Officer)を務めています。
アップルでは、元米国環境保護庁長官のリサ・ジャクソン氏が事業およびサプライチェーンの100%再生可能エネルギー化を推進しています。ティム・クックCEOの意を受けて、自らのライフワークとして、アップルの影響力を使って、気候変動対応を進めています。
企業がサステナビリティを推進するには、サステナビリティ課題の動向に対する感度を持つこと、サステナビリティ課題が自社の経営にどう影響するかを理解すること、社内にサステナビリティ課題の重要性を伝え動かすこと、サステナビリティ課題への具体的対応を進めることが必要です。マルチセクターリーダーは、それを進める力を持っています。
サステナビリティ課題解決をミッションとする政府やNGOでの経験を持つマルチセクターリーダーは、課題に対する感度が高く、最新の情報や人材ネットワークにアクセスできます。さらに、企業での経験もあるマルチセクターリーダーは、サステナビリティ課題が企業経営にどのような影響を及ぼすかを理解しています。また、多様な組織での経験から、サステナビリティ課題の重要性をどう伝えれば、社内の人々を納得させることができるかのノウハウも持っています。そして、幅広い人脈、各セクターの行動メカニズム理解のもと、サステナビリティ課題に対応する取り組みを推進するため、イニシアチブに参画したり、マルチセクターのコラボレーションを実現したりします。
日本企業と海外企業のサステナビリティの取り組みにおけるダイナミズムの差には。マルチセクターリーダーのような人材の有無も大きく影響していると思います。国内でもマルチセクターリーダーは少しずつ増えていますし、サステナビリティ推進のために必要があれば、海外の人材を招へいすることも考えられるでしょう。
日本でも、マルチセクターリーダーが活躍し、サステナビリティの取り組み、イニシアチブ、コラボレーションがダイナミックに進んでいくようになればと思っています。
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