ビジネスの世界では、GAFAをはじめとするプラットフォーマーが注目されています。データが21世紀の石油と言われるように重要な資源と見なされる中、膨大なデータを押さえるプラットフォーマーの影響力は、益々大きくなると考えられています。
そうしたプラットフォーマーは、サステナビリティの観点でも、大きな影響力を及ぼすことができます。最近話題になったのは、アマゾンです。アマゾンと言えば、サステナビリティの評価は低く、ハーバード・ビジネス・レビューが発表する世界のCEOベスト100で、ジェフ・ベゾス氏は、財務のランキングではトップクラスですが、財務に加えてサステナビリティを考慮したランキングでは、下位に沈んでいます。
そのアマゾンが、2030年までに再生可能エネルギー100%を達成すること、2040年までにCO2排出を実質ゼロにすることにコミットしました。具体的な取り組みとしては、配送用の電気自動車を10万台発注すること、世界中で森林再生プロジェクトに1億ドルを投資することにコミットしています。取り組みの透明性を高めるため、サステナビリティに関する新しいウェブサイトも開設しています。
ジェフ・ベゾスCEOは「気候変動問題の解決のために、アマゾンのサイズとスケールを利用することにした。アマゾンほどの巨大物理インフラを持つ企業がパリ協定の目標を10年前倒しで達成できれば、どんな企業でも可能だろう」と語り、他の企業にも気候公約への署名を呼び掛けています。
このアマゾンの影響力は大きく、10万台のEV購入自体も大きなことですが、これがきっかけとなって、他の企業においても事業用の車両にEVを導入する動きが加速する可能性があります。充電インフラ等の整備が進めば、さらにEVを導入しやすくなり、広くEVが普及していく可能性もあります。プラットフォーマーの影響力は、サステナビリティの領域でも大きいものがあります。
アマゾンに関しては、社員がサステナビリティの取り組みを後押ししています。アマゾンは2月に2030年にゼロカーボン出荷50%達成という目標を発表していますが、社員がこれを不十分だとして署名運動を展開しました。4月には、社員有志4,500人が署名して、ジェフ・ベゾスCEOと取締役会に対して企業として気候変動に真摯に取り組むよう求める公開書簡を送っています。さらに5月には、社員が保有する自社株に基づく株主権を行使して、気候変動への対応についての要請を盛り込んだ株主提案をして、株主総会の議題にあげています。また、9月には、1000人単の社員が、世界的な気候変動への対策を求めるデモ活動の一環として、ストライキを行う計画を進めました。
プラットフォーマーにとっては、その競争力・革新の原動力となる社員、タレントが最も重要なステークホルダーと言って良いかも知れません。その社員がサステナビリティを求めることは、プラットフォーマーに大きな影響を及ぼします。こうしたところから、社会のサステナビリティに向けた動きが加速するのかも知れません。
プラットフォーマーのサステナビリティに向けた変化には、これからも注目です。
「プラットフォーマーのサステナビリティに向けた変化」について拝読しました。ここではアマゾンの環境分野での取り組みが取り上げられており、それはそれで必要だと思いますが、プラットフォーマーという点をフォーカスすれば、やはりビジネスにおけるデータ活用面でのサステナビリティ重視という変化こそが何より重要ではないかと思いますが、いかがでしょう。具体的にはデジタル経済を含む市場全体に大きな影響力を持つ民間企業としての公益性、公共性をより重視した経営へのシフト(データ・プライバシーやセキュリティ分野への経営資源の積極的な投入、政府との連携による適切な制度・ルールの構築など)を指しています。