検索
  • takehikomizukami

フィンク・レターへの反応に見るサステナビリティへの要請の変化

1月26日、投資運用世界最大手ブラックロックのラリー・フィンクCEOが投資先企業のCEOに向けた恒例の「フィンク・レター」を発表しました。毎年この時期に、次の株主総会シーズンを意識した書簡を出していますが、近年は、すべてのステークホルダーに価値を生み出すパーパスの重要性、気候変動への取り組みの重要性を訴えるなど、サステナビリティを重視した内容になっています。


今年のフィンク・レターも気候変動に関する内容が中心で、新型コロナウイルス・パンデミックにより、気候変動に関するトランジションはますます加速し、ESG投資の投資信託の額も前年から約2倍に積み上がり、ESGの動きは確たるものになっているとの見方を示しています。そして、気候変動に対して、現在の主要インデックスの投資ポートフォリオでは、3℃上昇の道筋を辿っており、技術イノベーションや事業計画でのトランジッションが不可欠とし、カーボンニュートラルと整合するビジネスモデルについて事業戦略に落とし込み、取締役会でのレビューを行い開示するよう求めています。


また、新型コロナウイルスのパンデミックの社会的弱者への大きな影響を踏まえ、ESGのSの側面を重視し、顧客、従業員、地域社会にどのような価値を提供するかのパーパスを示すことが、長期的な利益を株主にもたらすとしています。

このフィンク・レターについて、フィナンシャルタイムズのニュースレター「モラル・マネー」によれば、気候変動に取り組む投資家などから失望の声があがっているとのことです。フィンク・レターで、投資家にカーボンニュートラルを実現する事業戦略を開示するよう投資家に求めているものの、曖昧で具体性に欠けると指摘されています。


「2050年までに温室効果ガスの排出量を事実上ゼロにするという目標に、事業計画が合致しているかどうかを公開すべき」と投資先に計画の公表を要請しているものの、具体的にどういう計画を示すべきか分からないということです。SBTに合致する目標の設定とそれを実現するために何にどれくらい投資していくのかなど、具体性・納得性のある計画を求めるべきということです。


また、「カーボンニュートラルを実現する事業計画」を示さない投資先にどう対応するかも曖昧だと指摘されています。ブラックロックは株主総会で反対票を投じたり、ポートフォリオから落としたりする判断をすることもあるとのことですが、具体的なプロセスや判断基準は示していません。


フィンク・レターは、4年前にESGの重要性、3年前にパーパスの重要性を訴え、投資家や企業に対して大きなインパクトを与えていました。今年のフィンク・レターへの反応を見ると、ほんの3、4年で、サステナビリティは大きな方向性を示すだけではなく、具体的で納得性のある中身を示すことが求められるようになっていることが良く分かります。


最近は、2050年に向けたビジョンなどを掲げる企業が増えていますが、大きな方向性を示すだけでは評価されない時代になっていることも理解しておくべきでしょう。


32回の閲覧0件のコメント

最新記事

すべて表示

世界を現在良い方向に変えている企業とは? - Change the World List 2021

今年も米フォーチュン誌が「世界を変える企業リスト(Change the World List)」を発表しました。社会インパクト、財務的成果、イノベーション、戦略との統合の視点でCSV企業を選定・評価し、ビジネスの中心的戦略を通じて、社会にポジティブなインパクトを及ぼしている企業をリストアップしています。他のラインキング等では、毎年同じ企業がリストアップされることが多いのですが、Change the

課題先進国・地域であることを生かし、課題解決ソリューションを広く展開する

イスラエルでは、世界の水資源が不足している地域で、海水を飲料水や灌漑用水に転換するビジネスを展開するIDEテクノロジーズに代表されるように、水問題を解決する技術が発展し、多くの企業が水関連ビジネスを展開しています。 イスラエルで水技術が発展しているのは、イスラエルが水の課題先進国だからです。国土の60%が荒野で、淡水の水源は限られ、降水量も少ないイスラエルは、昔から水問題に苦しんできました。有名な

脱炭素による地方創生をどう進めるか

世界的に脱炭素による新たな社会経済づくりが始まっている。新たな社会経済は、豊かさと脱炭素を両立するものでなければならず、世界中でグリーンディールなどの脱炭素による経済成長を追求する政策が取られている。日本でも、グリーン成長戦略が掲げられ、2兆円のイノベーション基金を創設し、エネルギー関連、輸送製造関連、家庭・オフィス関連の14分野で技術開発・事業化を進めることとしている。 また、脱炭素を地域レベル