top of page
検索

パーパスの意義-心置きなく金儲けするために-

takehikomizukami

更新日:2021年12月12日

世の中には、お金儲けがモチベーションになる人とそうではない人がいるようだ。お金儲けがモチベーションにならない人でも、家族を養うために、自分が生活していくために、お金を稼がなくてはならない人も多い。しかし、お金儲けがうまいのは、それが純粋なモチベーションになる人だ。


ビジネスでの成功とは、お金儲けの成功と同義だ。お金儲けがうまい人、お金儲けがモチベーションとなる人は、ビジネスでの成功者となることが多い。一方で、お金儲けではない何かに高いモチベーションを持つ人もいる。お客様からの感謝、優れた製品を開発する喜び、はたまた競争に勝つこと、様々なモチベーションがあるだろう。モチベーションは様々だが、金儲けにつながるものに高いモチベーションを持つ人は、ビジネスにおいても成功することが多い。


社会価値の創造や社会課題の解決に高いモチベーションを持つ人もいる。ここで敢えて社会価値の創造と社会課題の解決を分けたのは、社会に貢献するものでもビジネスで対応しやすいものと、そうでないものがあるからだ。人々の生活をより豊かにする、より便利にするというのは、ビジネスで対応しやすい社会貢献だ。一方で、豊かさ、便利さ追求の副作用、外部不経済として顕在化する社会課題は、ビジネスで対応するのがやや難しい。気候変動、貧困、プラスチック廃棄、人権侵害、・・・世の中には社会課題が溢れている。グローバルな社会課題を整理したものがSDGsだが、SDGsの多くは、ビジネスでの対応は容易ではない。


しかし、特に深刻な社会課題については、ビジネスで対応してもらわなければ困る。なぜなら、ビジネスは社会課題の原因として大きな影響を及ぼしており、また解決策を提供する大きなポテンシャルを持っているからだ。気候変動などの深刻な問題については、その解決がビジネスでの儲けとなる仕組みを作るべく、世界のリーダーが躍起になっている。


モチベーションの話に戻るが、私は金儲けにはまったくモチベーションが湧かない。社会課題の解決にこそモチベーションが湧く。そのため最初のキャリアの選択肢として公務員を選んだ。私が仕事を始めた1990年代は、社会課題解決の主体が政府だったからだ。その後、社会課題の主体は、政府だけでなく、NPO/NGO、社会起業家などに広がり、普通の営利企業でも社会課題解決を標榜する企業も増えている(主目的として取り組んでいるとは言えないにしても、社会課題を気にする営利企業は増えている)。


モチベーションに関して言えば、私のようにお金儲けにモチベーションが湧かない人が増えているのではないかと感じる。少なくとも先進国は経済的に豊かになり、一方で社会課題が顕在化し、それがメディアやICTの発達でインプットされているといった背景もあるのだろうが、ミレニアル世代、Z世代などは、金儲けではない何かを求めている印象だ。それは、社会課題解決または社会価値創造ではないかと思う。


企業としては、そうした人々を惹きつけ、モチベーション高く能力を発揮してもらいたい。そのために必要なのが、「パーパス」だ。自社がどのような社会価値を生み出しているのか、自社は何のために存在しているのか、明確にする必要がある。良いパーパスを掲げ、それが浸透している組織が、これからのビジネスでの成功者となるだろう。金儲けにはまったくモチベーションが湧かない人材も、自分が共鳴できるパーパスのために仕事するのであれば、高いモチベーションを発揮できる。どのような役割においても、パーパスのためだと思えば、やる気が出るし、その実現のために工夫するようになる。これからの企業にとって、パーパスは益々重要になる。


営利企業の場合は、パーパスの実現=金儲けとなるはずだ。そのようなパーパスを掲げる必要がある(そうでなければ真の意味で浸透しないだろう)。そして、「パーパス」=「単なる金儲けではない社会的意義」という文脈を共有することで、金儲けにモチベーションが湧かない人も、心置きなく、高いモチベーションを持って金儲けができる。


また、社会課題が溢れ、SDGsなどの社会課題に関心を持つ人が増える中では、金儲けの面ではハードルが高くても社会課題解決をパーパスに掲げる企業に魅力を感じる人も増えるだろう。さらに、社会課題解決が儲かるように経済の仕組みが変われば、ビジネスでの成功の可能性も高まる。社会課題解決をパーパスに掲げる新しいタイプの企業も増えるだろう。それが本質的な意味でのサステナブルな社会を築くことにつながる。そういう変化に期待したい。

閲覧数:100回0件のコメント

最新記事

すべて表示

非財務と財務の相関関係や因果関係を可視化する企業が増えているが、現在の取組を肯定するのではなく、戦略や将来ビジョンの納得性を高め実現するために使うべき

日本企業では、非財務と財務の相関関係や因果関係を可視化するのが流行っているようだ。非財務指標と企業価値の相関関係を統計学的に分析する、非財務活動と企業価値との因果関係(の粗い仮説)をロジックツリーのような形で構造化するなどの取組みが行われている。...

「自社のサステナビリティ」は日本独自の言い方。日本のサステナビリティ経営をガラパゴス化にしないように注意が必要

以前、 日本型CSVとして日本企業の特長である「継続力」を活かしたCSVがあり、東レの炭素繊維などを代表例としてあげました 。 日本は、世界的に見て長寿企業が多く、200年以上の長寿企業の数は、世界の4割以上を占め、2位ドイツの2倍以上とされています。ゾンビ企業を生かすこと...

本物のサステナビリティ経営の5つの要諦

2025年は、トランプ政権誕生などもあり、ESGに逆風が吹くと考えられている。しかし、世界のサステナビリティに向けた動きは長期的に不可逆的なものだ。短期的に逆風が吹くときこそ、本物のサステナビリティ経営を着実に進めることが、長期的な企業価値の創造という観点からも重要となる。...

Comentários


bottom of page