top of page
検索

トランプ政権の誕生は、サステナビリティの長期的な発展に向けた小さな揺り戻しに過ぎない。ここから何を学べるかを考え、さらなるサステナビリティの発展につなげていくことが大事だ。

takehikomizukami

パリ協定からの離脱、EV普及策撤廃、風力発電向け連邦政府の土地利用禁止、LNG開発と輸出の促進、政府のDEIの取り組み廃止、男女以外の性は認めないなど、トランプ政権は反ESG/サステナビリティの政策を矢継ぎ早に打ち出している。


欧州でも企業サステナビリティ報告指令(CSRD)などの簡素化法案が公表されるなど、一見サステナビリティの動きが後退しているように見える。


ここ数年、欧米を中心に野心的なサステナビリティ目標や政策を掲げる動きが続いてきたが、それに対する反発・不満もあり揺り戻しが来ているということだろう。


トランプ政権による揺り戻しは極端なので、再度サステナビリティ促進に向けた揺り戻しがあることは間違いない。


人類の経済活動による気候変動、生態系破壊は着実に進んでおり、対策は必須だ。環境の取り組みは、一旦速度が緩んだとしても前に進んでいくことは間違いない。


DEIについても、差別や分断が争いの原因となることは分かっている。歴史的に見ても人類の進化の方向性としてDEIは進んでいくだろう。


欧州のCSRD等の緩和は、余り効果がなく負担ばかり増える、形式重視で監査法人などを儲けさせるだけの規制が合理的方向に簡素化されているので、良い揺り戻しだ。


基本的に世の中は螺旋的に発展していく。古いパラダイムから新しいパラダイムにシフトするときには、まず極端に振れてしまう傾向があり、古いパラダイムが否定される傾向がある。しかし、新しいパラダイムに向かう中で新しいパラダイムの問題が顕在化し、その解決策として古いパラダイムの持っていた良さが見直される。


世の中は、一つのパラダイムともう一つのパラダイムの間を行ったり来たりしながら、それぞれの良いところを取り入れつつ螺旋的に発展していく。すなわち、世の中の発展は、あたかも螺旋的階段を登るように上から見ると円を描いて元に戻ってくるように見えるが、横から見ると、確実に高い位置へと進歩していく。


サステナビリティに向けた動きも、行ったり来たりしながら螺旋的に発展していくだろう。経済成長や効率重視が行き過ぎたゆえに顕在化している気候変動、環境破壊や格差の問題について、経済的豊かさやテクノロジーの進歩など現在社会の持つ良いところは維持しつつも、環境との共生や人々の絆など、昔の社会が持っていた良いところ取り入れ、持続可能な新しいパラダイムを創っていく。


トランプ政権の登場などによるサステナビリティの揺り戻しは、長期的に新しいパラダイムに向かっていく中での、小さな揺り戻しにすぎない。


重要なのは、長期的な方向性をしっかり見据えつつ、この短期的な揺り戻しの意味、何故これが起きているのか、ここから何を学べるのかをしっかり考え、より良い螺旋的発展につなげていくことだ。

 
 
 

最新記事

すべて表示

「サステナビリティ経営」は、「企業を長期的に持続可能にする経営」ではない。

最近、「サステナビリティ経営」=「企業を持続可能にする経営」と解釈している経営者、ビジネスパーソンが多いと感じる。しかし、サステナビリティ経営が求められているのは、企業活動の影響により環境・社会問題が深刻化する中、世界を持続可能にするために経営のあり方を変えていく必要がある...

社会課題を解決するイノベーションを生み出し、マーケティングでその市場を創造する。イノベーションとマーケティングは、社会課題解決ビジネス(CSV)においても基本的機能と言える。

ドラッカー曰く、「企業の目的は、顧客の創造である。したがって、企業は2つの、そして2つだけの基本的な機能を持つ。それがマーケティングとイノベーションである。」 この言葉の意図は、「企業の役割は、イノベーションで新たな価値を生み出し、マーケティングでその市場を創り広げること」...

「社員が家族や世間に誇れる立派な会社」を創りたいという思いが、サステナビリティ経営につながる

伊藤忠は統合報告で高い評価を得ている、統合報告書のアワードなどの常連だ。トップメッセージへの評価も高い。最新の統合報告書でも、以下のような岡藤CEOの生々しい言葉が並べられている。 「本を一冊読むにしても、常に経営に対して問題意識を持ち続けていると、必ず何らかの教訓を得るこ...

Comments


Copyright(c) 2019 Takehiko Mizukami All Rights Reserved.

bottom of page