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スコープ4と気候変動ロビー活動への監視の強まり

スコープ4という言葉を見かけるようになった。温室効果ガス排出量を算定する範囲を定義するスコープ1(自社による直接排出)、スコープ2(購入電力等による間接排出),スコープ3(スコープ1,2以外のバリューチェーンによる排出)に続く概念だ。


しかし、現在のところスコープ4は、明確に定義されたものではなく、2つの意味で使われている。1つは、製品やサービスを使用することで排出せずに済む温室効果ガスの量を示すもの。日本のメーカーが従来からアピールしており、経済産業省もガイドラインを策定している温室効果ガス排出「削減貢献量」のことだ。カーボンハンドプリントなどと呼ぶこともあるようだ。


もう1つは、気候変動に関連するロビー活動のことだ。ロビー活動には、政治家や官僚への直接的な働きかけに加え、対外的なPRなども含む。ロビー活動は、脱炭素に向けた政策導入を促すこともあれば、妨げることもある。化石資源に依存する企業は、これまで温暖化に懐疑的な論調を広めたり、脱炭素に向けた政策導入に反対してきたとされている。


気候変動への対応が喫緊の課題となる中、気候変動に関する企業のロビー活動への監視が強まっている。英国の独立系気候変動シンクタンク「InfluenceMap (インフルエンスマップ)」は、気候変動に関連した企業のロビー活動を評価し、ネガティブな影響を及ぼしている企業のランキングを発表している。


1位シェブロン、2位エクソンモービルは、良く理解できる。一方で、3位にBASFが入っている。


世界最大の化学企業BASFは、自社で製品の社会インパクトを金銭価値化し、それを広げるためのイニチアチブを立ち上げている。それ以外にも、風力発電を所有して自社の生産に活用する、中国にて再エネ100%で操業する工場を建設するなど、サステナビリティの先進企業と考えられている。その一方で、ロビー活動では、脱炭素に反対しているとされている。化石資源との結びつきが強い化学業界のリーダーとして、脱炭素を進める姿勢を示しつつ、脱炭素政策にネガティブな影響を与えているという、ダブルスタンダードの取り組みをしていると評価されている。


実態上は、化石資源に依存している業界では、化石資源関連事業でも儲けて、再エネなどのサステナビリティ事業でも儲けている企業も多い。ダブルスタンダードが横行している状況にある。しかし、そこに対する監視が厳しくなっている。


上記の気候変動にネガティブな影響を及ぼしている企業ランキングには、8位新日鉄、10位トヨタ自動車と、日本企業もリストアップされている。こうした監視強化の動きも注視しつつ、トランジションを進めていることが必要だ。


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