最近は、ジャニーズのニュースを見ない日はありませんが、この問題は、企業が人権への対応を考える良い機会となっています。
9/7のジャニーズ事務所の会見を受けて、アサヒグループHDは、いち早くジャニーズ事務所のタレントを広告に起用しない方針を発表しました。勝木社長は、ジャニー氏の行状は容認しがたく、「2019年に策定したグループの人権方針に照らせば、取引を継続すれば我々が人権侵害に寛容であるということになってしまう。取引を継続できないと判断した」としています。
被害者救済や再発防止策に十分納得が得られるまでジャニーズ事務所タレントと新たな契約を結ばないとしているサントリーHDの新浪社長は、「ジャニーズ事務所のタレントを起用することは、チャイルドアビューズを企業が認めるということであり、国際的には非常に非難のもとになる 」としています。
2011年に「ビジネスと人権に関する指導原則(以下、「指導原則」)」が国連で承認されて以降広まってきた、企業における人権意識醸成が一定程度機能したと言えるでしょう。
しかし人権の専門家からは、広告に起用しないなどは、リスクマネジメントやコンプライアンスの観点からの対応で、「指導原則」が求めているものとは違うとの指摘があります。
「指導原則」は、人権という経営リスクから自社を守るのではなく、人権侵害の被害者を守ることを求めています。いきなり取引停止をするのではなく、人権被害者を保護・救済するために、自社の影響力を行使することを求めています。
その理由は、取引を停止すると、監視の目が行き届かなくなるなど、人権問題がむしろ深刻になる可能性があるからです。
ジャニーズの件で言えば、3月に英BBCがドキュメンタリー番組を放映し、4月には元ジャニーズの方が性被害について告発しています。こうしたタイミングなどで、ジャニーズに対して期限を切って対応を求め、「対応が不十分な場合は広告起用を停止します」とするなど、改善に向けて影響力を行使することが指導原則に基づくものです。
ジャニーズ問題をきっかけに、「人権被害者を保護・救済するとはどういうことか?」「取引先で人権問題が顕在化したときにどう対応するか?」を考えてみては如何でしょうか。
ジャニーズ事務所のタレントを広告などに使ってきた企業は、「もっと早く対応できなかったのか?」「ジャニー喜多川氏が存命でも広告停止などはできたか?」「ジャニーズ以外に問題はないのか?対応は必要ないのか?」など、広告のあり方、広告代理店や芸能事務所との取引のあり方などについて検討し、必要があれば影響力を行使すべきでしょう。
なお、ジャニーズには人権方針がないようですが、芸能事務所、広告代理店、メディア企業は、人権侵害防止に向けて、より真摯に取り組む必要があるでしょう。
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