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シナリオ分析は特定のシナリオに掛けるものではなく、すべてのシナリオに備えたうえで、変化の兆しを感度良く捉えて対応すべきもの

  • takehikomizukami
  • 4月24日
  • 読了時間: 3分

地政学リスク、AIの進化や気候変動の影響など、世界の不確実性は高まる一方です。こうした不確実性の高い状況において、意思決定のツールとして有効なのが、長期シナリオ分析です。未来を確実に予測することは不可能としつつ、自社に影響を及ぼす要因の変化を想定しつつ、起こりうる可能性のある複数の未来(シナリオ)を策定し、意思決定のガイドとします。


シナリオ策定の基本的流れは、以下の通りです。

① 社会の変化動向をとらえるための情報をPESTLE(Politics, Economy, Society, Technology, Legal, Environment)などのフレームに基づき収集し、その中から自社事業に影響を与える変化要因(ドライビングフォース)を抽出

②ドライビングフォースの中から、自社事業へのインパクトが特に大きく、不確実性の高いものをシナリオの骨格となるキードライビングフォースとして設定

③キードライビングフォースの変化の組合せにより複数のシナリオを策定

④現実がどのシナリオに近づいているかを理解するための先行指標を設定しつつ、各シナリオに対応した戦略を準備


この長期シナリオ分析で有名なのが、エネルギー大手のシェルです。シェルでは、未来をいくつかのシナリオとして理解する長期シナリオ分析(シェルでは、シナリオプランニングと呼びます。)を経営の根幹に据えてきました。


1970年代初頭には、西暦2,000年時の石油産業について洞察を加えるプロジェクトを実施。「石油価格は現状を維持する」「OPECが主導して石油価格の高騰が起こる」という2つのシナリオを導出。現場部門を中心に準備を進めていたため、1973年に第4次中東戦争が発生して石油危機が現実のものとなったとき、シェルはシナリオに基づき急激な環境変化に対応でき、7メジャー最弱だったシェルは、戦争終結時には世界第2位となりました。


1980年代には、「ソ連は現状の体制を維持する」「ソ連は経済悪化からグリーン化(民主化)する」という2つのシナリオを描画。ソ連でペレストロイカが始まったとき、シェルはいち早く動き、ソ連の天然ガスや油田の権益獲得で優位に交渉を進めることができました。


長期シナリオ分析を通じて、「消費者意識の変化」「世界の人口と都市や経済の形」「エネルギー、水、食糧などの課題の深刻化」などの方向性を理解できます。不確実な時代において、シナリオ分析を通じて変化に備える重要性は増しています。


サステナビリティ経営においても、TCFDでシナリオ分析が求められるようになって以降、気候変動の影響についてシナリオ分析をする企業が増えました。気候変動というキードライビングフォースについて、2℃、4℃などの気温上昇シナリオの影響(リスク・機会)の財務影響を分析しています。しかし、情報開示のために形式的なシナリオ分析をしている企業が多い印象で、シェルのように経営の意思決定の根幹に据えている企業があるかは疑問です。


最近で言えば、EVシフトを急速に進めた企業の業績が厳しくなっていますが、EVの普及速度に不確実性があることはシナリオ分析をしていれば分かっていたはずです。不確実性がある中でも、長期的にはEVは普及すると判断し、EVの普及速度が落ちてもEVへの投資は続けるという意思決定もありますが、強いオーナシップがなければ株主・投資家に説明するのは難しいでしょう。EVの普及速度が鈍化するシナリオも念頭に入れた準備が不可欠だったはずです。


シナリオ分析は、本来どれか1つのシナリオに掛けるのではなく、不確実性の影響を理解し備えるものです。どこシナリオが具現化しそうか、その兆しを感度高く洞察して迅速に動く必要があります。シナリオ分析は、そこの備えがあってこそ意味のあるものになります。

 
 
 

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