top of page
検索
takehikomizukami

サステナブルな消費行動を促す5つの方法

今月号(2020.3)のDIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー(DHBR)に、「口先だけのグリーンコンシューマーを動かす方法」という論文が掲載されています。環境に優しいサービスが好ましいと回答する消費者は65%だが、実際に購入するのは26%だけという事実を踏まえ、このギャップを埋めるためにはどうすれば良いか、5つの方法を示しています。


サステナビリティの仕事をしていると、多くの消費者が環境の配慮した商品を求めている、サステナビリティに配慮した商品にはプレミアムを支払うというサーベイ結果を良く目にします。しかし、企業の方の話を聞くと、実際の消費行動にはつながっていないという話も聞きます。消費者の意識と行動にギャップがあるとすると、それを埋めることは、サステナブルな社会づくりのために極めて重要です。


DHBRの論文では、消費者をサステナブルな商品に向かわせる方法として、社会的影響を利用する、よい習慣を形成する、ドミノ効果を活用する、知性と感性のどちらに訴えるかを決める、所有権よりも経験を優先させる、の5つを挙げています。


「社会的影響を利用する」とは、「他の人は環境に優しい商品を購入している」と伝えるなど、サステナブルな行動について、当然の行動だ、それが社会規範だという意識を持たせることです。消費者の行動を周りから見えるようにすること、社会的なグループ間の健全な競争を促すなどで、この効果を強化することができます。


「よい習慣を形成する」とは、サステナブルな消費行動を習慣として根付かせることです。そのためには、最初の消費体験が重要です。サステナブルな行動に対するハードルを下げることも必要ですし、プロンプト(合図)、フィードバック、インセンティブの提供も有効です。また、人は、引越し、就職、転職、結婚など、人生の転機が習慣を変えるきっかけとなることも多いので、そうしたタイミングで、サステナブルな消費行動を根付かせる仕掛けを考えることも大事です。


「ドミノ効果を活用する」とは、1つの行動をきっかけとして、次々に行動を生み出すことです。実際、食品ロス削減などのサステナブルな行動を1つ始めると、省エネなど他の行動に移っていくことが観察されています。この効果を促進するには、最初の行動で、サステナビリティに対するコミットメントを引き出せるようにすることが重要です。


「知性と感性のどちらに訴えるかを決める」とは、企業が消費者とのコミュニケーションにおいて、感情的なレバーを引くか、合理的に論じるかを選択することです。感情に訴えかける場合は、サステナブルな行動を褒めるなどでプライドをくすぐる、それとなく罪悪感に訴えかけるなどの方法があります。知性に訴えかける場合は、その商品を購入することで、環境にどのような効果があるか、定量的に示すなど具体的に伝えることが効果的です。


「所有権よりも経験を優先させる」とは、モノからコト、アズ・ア・サービス、所有から共有といったビジネスモデルの変化を促進することです。有形財の所有ではなく、経験を提供することで、環境フットプリントを小さくすることができます。この方法においては、使用後の製品のリサイクルを提案する、高品質の製品を長くしようしてもらうなど、製品の使い方や廃棄方法なども提案できます。


サステナブルな商品を売れるようにするためのマーケティングの方法は、上記のようにいろいろ考えられます。行動経済学なども進化しており、消費者の行動変容をうながす知識も増えています。サステナビリティを推進する企業は、いろいろ工夫してみても良いのではないでしょうか。

閲覧数:748回0件のコメント

最新記事

すべて表示

社会課題解決イノベーションのヒントを豊富に示す「破壊なき市場創造」

「ブルー・オーシャン戦略」のW.チャン・キム、レネ・モボルニュ氏の新著「破壊なき市場創造の時代」は、「非ディスラプティブな創造」の考え方、事例などを紹介しています。 非ディスラプティブな創造は、技術的イノベーションなどの従来のイノベーションの概念とは一線を画した「既存の業界...

長期視点で戦略性を持ってCSVを進める日本のCSV先進企業、ユニ・チャーム。「財務と非財務の取り組みは表裏一体。社会課題への貢献が社員のモチベーションにもつながる。」

前回、「「社会的に価値があるものには、必ず市場もあるはず」という信念を持ち粘り強く取り組む。そうした「継続力」を活かしたCSVができることが日本企業の特長ではないか。」と書いて、東レの炭素繊維の事例を紹介しました。 今回は、長期視点でCSVを実践している企業として、ユニ・チ...

「社会的に価値があるものには、必ず市場もあるはず」という信念を持ち粘り強く取り組む。そうした「継続力」を活かしたCSVができることが日本企業の特長ではないか。

「三方よし」のDNAを持つ日本企業とステークホルダー資本主義やCSVは親和性が高いとの意見があります。確かに、日本企業は伝統的に社員やサプライヤー、地域社会などに配慮する企業も多く、ステークホルダー資本主義と親和性が高いと言えるかもしれません。また、「企業は社会の公器」とい...

Comments


bottom of page