企業がサステナビリティ経営戦略を考える場合、基本は「企業がサステナビリティに取り組む3つの原則」への対応となる。
まずは、3つの原則の観点から、サステナビリティ経営の軸なるマテリアリティを特定する。そして、マテリアリティにどう取り組むか、施策、戦略を考える。ここでも「企業がサステナビリティに取り組む3原則」が基本となる。
原則1への対応:自社事業、バリューチェーンが及ぼしている大きな負の影響を軽減する。
原則2への対応:世界の重要な課題で、自社が大きく貢献できるポテンシャルを持つものに対し、インパクトを創出する。
原則3への対応:自社事業、バリューチェーンに影響を及ぼす課題に対して、戦略的に対応し、企業価値を創造する。
マテリアリティは、3つの原則のいずれか、または複数の原則に対応する課題が特定されているはずだ。
原則1の観点から特定されたマテリアリティは、自社が大きなマイナスの影響を及ぼしているものであり、そのマイナスの影響を軽減する施策が必要となる。できれば、社会的責任としてコストを負担するだけでなく、自社にとっても価値を生み出す形で、取り組みたい。そうすることで、社会価値と企業価値を両立させ、取り組みをスケールすることができる。
例えば、マイナスの影響を軽減するにあたって、CSVの観点で、自社のバリューチェーンの生産性向上につなげられないか、業界を巻き込むルールメイキングを働きかけられないか、コレクティブ・インパクトで対応できないかなどを検討する。そして、マイナスの影響を社会と自社にとって最適な形で軽減する。
原則2の観点から特定された課題は、自社が課題解決のポテンシャルを持つものだ。CSVのフレームワークなどを踏まえて、戦略的に社会インパクトを創出することが期待される。自社のコア・コンピタンスをぶつけて、社会課題解決ビジネスの大きな市場を創造・獲得できると判断すれば、事業戦略の軸に据えるべきものだ。
自社が課題解決の大きなポテンシャルを持つものは、収益化がすぐには難しいと判断する場合でも、R&D戦略において検討すべきだ。また、社会貢献活動や、社会課題の解決に専念する「損失なし、配当なし」の利他的なビジネソーシャル・ビジネスとして取り組むことも考えられる。その場合は、「知の探索」として、将来のイノベーション創出を見据えて、ノウハウを蓄積する。
原則3の観点から特定された課題は、当該課題に取り組む/取り組まないことが、企業価値に直結するものだ。マテリアリティ評価の際に想定した自社企業価値への影響に対して、戦略的に対応し、企業価値を創造する、または企業価値の毀損を防ぐ施策を検討する。
原則3に関する課題は、人材の生産性に影響する、ブランド価値に影響する、原材料調達に影響するなど、6つの資本に関連するものが中心となるだろうが、CSVの観点を組み合わせて、自社の競争力を維持・強化するための課題対応の施策を検討すべきだ。
3つの原則に対応する施策は、サステナビリティの観点からの施策だが、事業機会、リスク、企業価値創造に向けた重要資本強化など、経営戦略・事業戦略と密接に関連する。経営戦略に統合して、経営レベルで推進すべきものだ。
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