企業がサステナビリティに先進的に取り組み、社会にインパクトを生み出しつつ社会価値を創造するには、サステナビリティ・インテリジェンスを持つことが必要だ。
サステナビリティ・インテリジェンスとは、持続可能性向けた動きや社会・環境課題に関連するマクロ・ミクロ動向を感度高く捉え、それがもたらす機会やリスクなどビジネスとの関連性を理解する組織能力だ。ビジネスが社会に対して果たすマクロ的役割の変化から、個別の社会・環境に関する動きがどのようにビジネスに影響するかのミクロ的視点まで、社会・環境とビジネスの接点に関する情報を先行的に捉え、その意味合いを洞察する。
サステナビリティ・インテリジェンスを持つことは、製品・サービスのCSVの創造につながる。少し古いだが、GEのエコマジネーションの事例を紹介する。
GEは、Generally not electricと言われたほど金融に傾注した影響もあり、近年は事業分割されるなど凋落が激しいが、2005年という、まだ環境ビジネスは儲からないと考えられていた時期に、「エコマジネーション」という環境ビジネスのビジョンを打ち出したことは、評価されるべきだ。他社に先行して、環境ビジネスの市場を切り拓いた。当時、GEが他社に先行して環境ビジネスのビジョンを打ち出せた背景には、社会・環境課題の専門家とのエンゲージメントを通じて、サステナビリティ・インテリジェンスを高めたことがある。
当時のCEOジェフ・イメルト氏は、毎年の各事業のレビューを実施している中で、すべての事業分野で顧客から「効率を高め、排出を減らすように」という命題を突き付けられていることに気づいた。そして、「環境」が、すべての事業の共通課題になっているのではないかという仮説を持った。
ジェフ・イメルト氏は、この仮説を検証するため、エネルギー、水、都市化などのマクロトレンドを共有し、GEのリーダー層が、顧客に長期視点で将来に向けて何を求めているかを問うとともに、環境課題の専門家であるNGO、政府などとも広く対話した。こうした幅広いステークホルダー・専門家との2日間の“夢の討論”を何度も開催し、「環境」への対応が新たなメガトレンドであるということを確信し、他社に先んじて「エコマジネーション」を打ち出し、環境ビジネスに本格参入した。
製品・サービスのCSV創出のためには、社会・環境課題のトレンドを把握し、イノベーションの対象とすべき課題を特定し、当該課題の現状と方向性を良く理解し、事業機会を見出す必要がある。そのためには、社会・環境課題に精通した外部専門家にビジネスの観点からの仮説をぶつけ、検証を繰り返すといったことを検討すべきだ。それが組織のサステナビリティ・インテリジェンスを高め、社会にとっても自社にとっても価値を生み出すことを可能とする。
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