ダウ平均は3万2,000ドルに迫り、日経平均は3万円超え。新型コロナ禍で経済的に厳しい状況におかれている産業、人々が多くいる中でこれはどういうことなのか。大きな理由は、新型コロナ対策による世界的な金融緩和、カネ余りでしょう。
新型コロナ禍で多くの人々が経済的に苦しむ一方で、ITなどのもともと高収入な人々が多い産業は好業績を享受し、金融緩和は株式などの資産を持つ人々の懐を潤しています。新型コロナ禍は、格差を益々拡大しています。これは大きな問題です。
一方で、世界的なカネ余りは、サステナビリティの観点からは良い面もあります。政府がグリーン・ディール、グリーン・リカバリーを進め、脱炭素関連を中心に環境技術が注目される中、脱炭素技術に資金が流れ込んでいます。
カネ余りを背景とした巨額の資金の流入は、「グリーンバブル」とも言える状況です。しかし、「バブル」というと聞こえが悪いですが、「バブル=悪」と考えるのは、固定観念にとらわれているかも知れません。
以前、ITバブルが最高潮に達していた1999年のダボス会議で、ビル・ゲイツが鋭い洞察力を
示す興味深い発言をしています。
ビル・ゲイツは、「ゲイツさん、このインターネット関連株の高値はバブルですよね?たしかにバブルでしょう?バブルに違いないですよね?」といった趣旨の質問攻めに遭っていました。とうとう腹を立てたビル・ゲイツが、レポーターたちに次のような意味合いのことを言っています。「いいか、あんたたち、バブルに決まっているじゃないか。だが、みんな肝心な点を見過ごしている。このバブルは、インターネット産業に新たな資本を惹きつけていて、イノベーションをどんどん加速させているんだ。」
ビル・ゲイツの言うとおり、にわか景気やバブルは、経済的には危険をはらんでいますが、イノベーションの速度を速める場合が多く、過剰投資が思いもよらないプラスの結果を生み出すこともあります。ITバブルの結果として、インターネット産業で様々な技術やビジネスモデルの革新が起こり、また、光ファイバーに莫大な投資が行われ、地上と海底におびただしい本数の光ファイバーが敷設された結果、電話やデータ送信のコストが激減しました。
今般のグリーンバブルもイノベーションを加速するでしょう。バブルは崩壊するかも知れませんが、そのレガシーは残り、ITバブル後もITテクノロジーが進化し続けたように、脱炭素テクノロジーは進化を続けるでしょう。グリーンバブルは良いバブルですので、(気を付けつつ)多くの人が乗っかるべきです。
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