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クリステンセンとサステナビリティ

  • takehikomizukami
  • 2020年3月20日
  • 読了時間: 3分

今年1月にクレイトン・クリステンセン氏が亡くなりました。イノベーションのジレンマなどの優れた洞察に基づく研究は、時代を超えて語り継がれるでしょう。また、クリステンセン氏は、人格者として、多くの人々の生き方に影響を与えています。


クリステンセン氏のイノベーションのジレンマの考え方は、短期的視点で既存の顧客、ステークホルダーの声に従うが故に、中長期的な失敗を導くという意味で、サステナビリティとも共通しているところがあります。


イノベーションのジレンマの考え方は、こうです。優良企業は、顧客の意見に耳を傾け、顧客が求める製品を増産し、改良するために新技術に積極的に投資するが故に、また、市場の動向を注意深く調査し、最も収益率の高そうなイノベーションに投資するが故に、その地位を失います。その原因となるのが、「破壊的イノベーション」です。「破壊的イノベーション」は、低価格、低性能のローエンド市場向け製品・サービスとして現れます。ハイエンド市場の顧客向けに高性能で収益率の高い製品・サービスを提供する優良企業は、これを無視します。いや、高性能や高利益率を求める顧客や投資家の要求、それに適応した社内プロセスのために無視せざるを得ません。しかし、「破壊的イノベーション」は新しい製品・サービスであるが故にその進化も早く、短期間に十分な性能を持つに至ります。「破壊的イノベーション」が十分な性能を持つに至ったときは時すでに遅く、十分な性能と価格競争力を持った製品・サービスが既存企業の顧客とその地位を奪ってしまうというものです。


サステナビリティに関しても、同様なことが起こっています。短期的な視点で顧客や株主の声に従ってサステナビリティに背を向けると、長期的な競争力を失う可能性があります。それを克服するには、リーダーシップが重要です。


売上高世界2位の電力会社であるイタリアのエネルは、将来的に100%再生可能エネルギーで電力を供給することにコミットしています。しかし、顧客は安価で安定した既存のインフラを生かしたエネルギー供給を求め、株主も既存資本の効率利用によるキャッシュの最大化を求めます。その中では、なかなか再生可能エネルギーにシフトするのは難しいのですが、エネルCEOのフランチェスコ氏は、世界にはエネルギーにアクセスできていない人が沢山いて、そうした人々にエネルギーを提供するにはイノベーションが必要、サステナビリティがイノベーションをドライブする、と考え、サステナビリティを推進しています。


エネルギーのほか、EVなどのモビリティ、代替肉などの食品、プラスチック代替素材など、サステナビリティ領域でも様々なイノベーションが生まれています。これらは、イノベーションのジレンマにおける破壊的イノベーションとは異なり、高価格で低性能なものが多いですが、早く進化するものもあり、ある程度の時間軸で、十分な競争力をもつに至るものもあります。それが、大胆にサステナビリティに向けてポートフォリオをシフトできない企業の顧客とその地位を奪うことは、十分考えられます。


こうしたサステナビリティにおけるイノベーションのジレンマを克服するには、パーパス、長期的視点、リーダーシップが必要ですが、「既存の意思決定プロセスや価値基準により長期的視点での取組みが阻害されないよう、独立した組織に、経営資源を与えて運営を任せる」などのクリステンセン氏が提唱するイノベーションのジレンマの克服方法も有効でしょう。


クリステンセン氏の理論は、サステナビリティ・イノベーションにも応用すべきです。クリステンセン氏も、自らの理論が持続可能な社会の発展に貢献することを願っているでしょう。

 
 
 

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